2008 Fiscal Year Annual Research Report
アセチリド錯体を用いた分子性磁性体・ナノ磁性体の開発
Project/Area Number |
20750119
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
西條 純一 Institute for Molecular Science, 物質分子科学研究領域, 助教 (00390641)
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Keywords | 分子性磁性体 / 強磁性 / フェリ磁性 / 遷移金属錯体 |
Research Abstract |
本年度はMnおよびCrを用いたアセチリド錯体[MnL_2(C〓CR)_2]+(Lはリンを含む多座配位子), [CrCyclam(C〓CR)]^+を構成要素とする分子性磁性体の開発を行った. スピンS=1のマンガン錯体を含む系[Mn(dmpe)_2(C〓CPh)_2][DDQ]及び[Mn(depe)_2(C〓CPh)_2][Pt(mnt)_2]はアセチリド錯体のベンゼン環と平面状磁性アニオンが面と面とを重ねるように積み重なった一次元構造を取っており, 分子間に-7K前後のかなり強い相互作用が働いている事が示された. アセチリド錯体において分子間相互作用に注目した研究はほとんど存在せず, この結果はアセチリド錯体が磁性体の構成要素たり得る事を示す新たな発見である. この結果をもとに, 分子間での相互作用をより強くし, 実際に磁性体として転移を示す物質を得るため, マンガン錯体よりも大きなスピンS=3/2を持つCr^<3+>を中心金属とし, 分子間相互作用を引き起こしやすい硫黄を含む芳香環を持っ3エチニルチオフェンを配位子とした[CrCyclam(C〓CThio)_2]^+を用いて物質探索を行ったところ, 2.3Kでフェリ磁性体へと転移を示す系[CrCyclam(C〓CThio)_2][Ni(mdt)_2]を発見した(2009年に発表予定). 本物質はアセチリド錯体を用いたものとしては自発磁化を示す初めての系であり, アセチリド錯体が分子性磁性体の構成要素として十分活用できることの実証例である. 磁化率の詳しい解析より, 本物質の磁気構造は鎖内相互作用およそ-7Kのフェリ磁性鎖が, 0.1K程度の弱い鎖間相互作用により二次元化し転移を示していることを明らかにした.
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Research Products
(5 results)