2009 Fiscal Year Annual Research Report
アセチリド錯体を用いた分子性磁性体・ナノ磁性体の開発
Project/Area Number |
20750119
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
西條 純一 Institute for Molecular Science, 物質分子科学研究領域, 助教 (00390641)
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Keywords | 分子性磁性体 / フェリ磁性 / 弱強磁性 / 遷移金属錯体 |
Research Abstract |
スピンS=3/2のクロムアセチリド錯体[CrCyclam(C≡C-R)_2]^+(Cyclam=1,4,8,11-Tetraazacyclotetradecane ; R=3-thiophene, Ph)を磁性カチオンとした物質開発を行い,S=1/2の[Ni(mdt)_2]^-(mdt=1,3-dithiole-4,5-dithiolate)と組み合わせることで[CrCyclam(C≡C-3-Thiophene)_2][Ni(mdt)_2](1)および[CrCyclam(C≡C-ph)_2][Ni(mdt)_2](H_2O)(2)という遷移金属アセチリドを含む系として初の磁性体を開発することに成功した.(1),(2)ともにカチオンとアニオンが交互に並んだフェリ鎖が基本構造となり,鎖内の相互作用はそれぞれ2J=-6.1および-5.7Kであった.(1)では鎖間においてもカチオン-アニオンが接することで実効的に強磁性的となる鎖間相互作用が働き,2.3Kでフェリ磁性体へと転移を起こす.一方,(2)は鎖間でカチオン-カチオンが接するため実効的な鎖間相互作用は反強磁性的であるが,3,7Kの反強磁性転移温度以下で小さな自発磁化を示す弱強磁性体であることが判明した.また,この弱強磁性相は1.8Kでもう一度相転移を起こし,低温で高保磁力弱強磁性相となることが確認された.(2)の弱強磁性の起源に関しては,結晶水として取り込まれた水分子が結晶全体のP-1対称性を局所的に崩し,それによってDzyaloshinsky-Moriya相互作用が許容になったためであると考えられる.本発見は,これまで磁性体としてはほとんど顧みられることの無かった遷移金属アセチリド錯体が,磁性体として利用可能であることを実証するものである.遷移金属アセチリド錯体はd電子系とπ電子系の強い相互作用により優れた光学特性を示すことが知られているが,今回の発見はさらに磁気特性を組み合わせられることを示唆しており,磁気光学的な応用の可能性を示すものともなっている.
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Research Products
(4 results)