2009 Fiscal Year Annual Research Report
DNA認識による光線力学的療法用光増感剤の活性制御
Project/Area Number |
20750131
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
平川 和貴 Shizuoka University, 工学部, 准教授 (60324513)
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Keywords | 光線力学的療法 / 光増感剤 / DNA / ポルフィリン / 一重項酸素 / 電子移動 / エネルギー移動 / がん治療 |
Research Abstract |
本研究の目的は、光化学反応をがん治療に応用した光線力学的療法に用いる光増感剤の活性制御である。昨年度設計したポルフィリン系光増感剤から、候補となる分子を合成した。電子ドナーをポルフィリン環に直結させ、光励起状態からの分子内電子移動をDNAとの相互作用で制御する分子である。電子ドナーには、ピレンおよびアントラセンを用いた。合成は、ピロールと芳香族アルデヒドを原料とする定法に従い、カラム精製の後、NMRおよび質量分析で確認した。アントラセンを結合した光増感剤では、酸性条件でポルフィリンが水溶性となる条件を確定し、水溶液中での活性制御を検討した。ポルフィリン環の蛍光が完全に消光され、励起状態が速やかに(ピコ秒のオーダー)で失活されることを確認した。さらに、DNAを添加すると自発的に相互作用し、励起状態の寿命の延長と蛍光強度の増大を確認した。一重項酸素の生成活性もDNAとの相互作用で発現することを明らかにした。DNAには、ATのみのオリゴヌクレオチド、GC配列を含むもの、子牛胸腺由来サンプルを用いたが、配列によらず、一重項酸素の生成活性が発現した。その活性制御機構は、ポルフィリンとDNAとの疎水的および静電的相互作用により電荷移動状態のエネルギーが上昇し、分子内電子移動が抑制された結果、酸素へのエネルギー移動が可能となるものである。以上のように、設計通り、DNAによる光増感剤の活性制御が可能であり、光増感剤の設計・合成法の指針にもなる成果が得られた。ピレン結合ポルフィリンでは、アントラセンのようなはっきりした活性制御は認められなかったが、類似の現象が観測された。また、基礎研究として、ピレンからポルフィリンへ高速の電子移動が起こることを分光学的に確認した。光線力学的療法の副作用に対する防護法も合わせて検討し、白金などの貴金属ナノ微粒子による活性酸素除去作用を明らかにした。
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