2009 Fiscal Year Annual Research Report
粒子法を用いた境界潤滑のマルチスケールシミュレーション
Project/Area Number |
20760065
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
熊谷 知久 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 助教 (30456149)
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Keywords | 摩擦係数 / 粒子法 / 第一原理計算 / 分子動力学 / マルチスケール解析 / 酸化物 |
Research Abstract |
まずは、第一原理計算を用いて、相対する酸化物(NiO、TiO_2、WO_3)表面間を近づけた後にせん断することによって、その相互作用の強さを算出した。この相互作用と実験において得られている摩擦係数との比較を行い、定性的な傾向が一致することを確かめた。このことは、酸化物中の酸素原子数が多いほど、金属原子に対する遮蔽効果が強くなるために、表面間の相互作用は弱くなり、酸素原子数が少ないほど、金属原子に対する遮蔽効果が弱くなるために、表面間の相互作用は強くなるためであると考えられる。しかし、この相互作用に相当する摩擦係数は実験値よりもかなり大きなものとなった。 そこで、この得られた相互作用を粒子法における表面間の摩擦係数として考え、2次元粒子法を用いた摩擦・摩耗シミュレーションへの適用を試みた。実験と同様、表面構造がなじむまでは大きな摩擦係数の変動が見られたものの最終的には定常的な値に落ち着いた。得られた系全体の摩擦係数は第一原理計算によって得られた摩擦係数よりもかなり小さくなり、実験値と近づいた。このことは、表面構造を現実と近いフラクタル性を持つ表面モデルを用いたために、表面間においてごく一部だけが真実接触していることが原因であると考えられる。 本研究では、シミュレーションで取り扱うことの難しかった摩擦現象を取り扱うマルチスケールの計算手法の開発を行い、単純な摩擦現象については再現することができたといえる。 また、本研究では当初、摩擦材として注目を集めているダイヤモンドライクカーボンをターゲットとしていたため、そのバルク構造の解析、表面構造の解析、フォノンモードの解析などを行い、新たな知見を得た。
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