2008 Fiscal Year Annual Research Report
紫外線照射による窒化炭素膜超低摩擦発現時のなじみ過程の促進と耐面圧の向上
Project/Area Number |
20760097
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野老山 貴行 Nagoya University, 大学院・工学研究科, 助教 (20432247)
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Keywords | 摩擦 / 摩耗 / 炭素系硬質薄膜 / 窒素 / 窒化ケイ素球 / 超低摩擦 / グラファイト化 / トライボロジー |
Research Abstract |
窒化炭素(CNx)膜は窒素雰囲気中において相手材料に窒化ケイ素(Si3N4)球を用いた場合, 摩擦初期は0.2以上の摩擦係数を示すが, 数百〜数千回の摩擦後に0.01以下の非常に低い摩擦係数を示すことが報告されている物質である. この超低摩擦の発現機構は窒素中摩擦に伴い, CNx膜の極表面から窒素原子が脱離することにより, 炭素のみで構成されるグラファイトのような層が1g-20nm程度形成されたためであることが明らかにされている. このような層の形成にいたる過程では, CNx膜に含有される各種の結合が切断されるエネルギが摩擦により与えられ, 結合の切断と未結合となった各原子間での再結合が繰り返される問に窒素はガスとして膜外へ放出され, 炭素はC=C結合として膜中に残留したものと考えられる. これまでにCNx膜の超低摩擦を得るための指針として極表面のなじみが重要であることが指摘されており, 摩擦初期かち低摩擦となるための処理として, 酸素ガスを吹き付ける手法や, 成膜時にCNx膜の極表面ヘアモルファスカーボン膜を形成する手法などが報告されているが, 摩擦や成膜による手法は今後の産業応用の観点から鑑みた場合, 作業工程が複雑であるため検討を要すると考えられる. そこでCNx膜の極表面の構造変化のために紫外線の照射手法について検討した. CNx膜はIBAD法により厚さ350・mのSi(100)基板上に膜厚が100nmとなるように成膜された. CNx膜の窒素含有量を成膜時の窒素イオンビーム強度の調節により0, 9, 12及び19%とし, 窒素含有量0%をSputter C膜とした. CNx膜に含有される窒素(N)と炭素(C)のN/C比はAESにより得られる強度比から算出した. 紫外線照射の影響を明らかにするため, 紫外線照射後乾燥窒素中で摩擦試験を行い, 以下の主な結論を得た. 1) 紫外線照射によりCNO.09膜の極表面から窒素原子が脱離し, 炭素のみの層が形成された. 2) 紫外線照射後のCNO.19膜の窒素雰囲気下での摩擦において, なじみ過程は最大で60%短縮され, 平均摩擦係数も減少した.
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