2009 Fiscal Year Annual Research Report
高機能化SAM膜界面における熱物質輸送に関する分子論的研究
Project/Area Number |
20760126
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊川 豪太 Tohoku University, 流体科学研究所, 助教 (90435644)
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Keywords | 熱工学 / 自己組織化 / 計算物理 / 分子熱流体 / 界面輸送特性 / SAM / 分子動力学 / 熱輸送特性 |
Research Abstract |
本研究では自己組織化単分子膜(SAM)と溶媒との界面における熱物質輸送特性を,分子動力学(MD)シミュレーションを用いて明らかにすることを目的としている.今年度では,固体基板・アルカンチオールSAM・アルカン溶媒系の界面モデルを構築し,界面を介して熱流束を発生させる非平衡分子動力学(NEMD)シミュレーションを行った.このNEMDシミュレーションの結果から,界面垂直方向の熱流束を詳細に分析した.すなわち,熱流束を構成する各成分をミクロな視点で分離し,輸送の支配要因を明らかにした.特に,類似の分子構造を持つ溶媒とSAM内部での熱エネルギー輸送機構の違いに着目した.前年度に金基板-トルエン溶媒界面の界面熱抵抗がアルカンチオールSAMの修飾によって低減することを報告しているが,上記の解析によってその要因が明確になった.SAMを介した界面系全体の熱抵抗は,SAM内部,SAM-溶媒界面という各要素を含んでいるが,特に1分子層によって構成される有機分子薄膜であるSAM内部では,熱伝導率が著しく大きい.これは本研究によって熱エネルギーが分子間相互作用でなく,分子内相互作用(共有結合相互作用)によって,SAM分子内部の炭化水素鎖上を伝わっていくことが要因であることがわかった.これは,工業的にも有機分子薄膜を介した高効率な熱輸送を実現する技術に基礎的な知見を与えるものと考えられる.今後はさらに,工学的に重要な溶媒や異なるSAM分子種間の熱輸送機構を明らかにすることが課題となる.
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Research Products
(8 results)