Research Abstract |
我が国の閉鎖性水域における環境基準達成率は依然として低く,その原因の一つとしてノンポイント汚染が挙げられるが,この汚染対策の課題として,汚染原因の潜在因子として考える懸濁態物質の知見,研究不足が挙げられる。そこで本研究は,河川河床に堆積する微細有機物(FBOM)の量変動および動態把握を目的として研究を行った。調査は,森林が90%以上を占める森林流域で行い,調査地の下流約100m地点には発電用の堰が設置してある場所で行った。調査手法は,1)2週間毎にFBOMを採取し,その量および,FBOM内部構成の把握のため炭素と窒素量の測定を行う,2)河川水量を把握するため,連続記録水位計を設置し測定する,3)生物分解によるFBOM量の把握を行うため,河床に落葉(リター)を設置し定期的に測定を行う,の3つを軸とした。 まず,2週間毎のFBOM調査と水位の測定から,水位が減少する時期にはFOBMが堆積傾向となり,水位が増加する時期にはFOBMが流出傾向となることが明らかになった。加えて,水位が常に高い時期はFBOM量が少なく堆積しなかったが,水位が常に低い時期のFBOM量にはばらつきが見られた。次に,河床に設置したリターの分解量を調査した結果,夏期は1ヶ月で40%に減少したが,秋期で90%,冬期で99%とほとんど減少せず,時期により大きな差が見られた。このことは,秋期から冬期にかけての水位が常に低い時期においてFBOM量にばらつきがあることと関連していると考えられた。 以上より,河床に堆積するFBOMは河川の水位変動に大きな影響を受け,水位が高水位の時期はほとんど堆積しないことが明らかとなった。ただ,水位が低水位の時期は,季節における生物分解に影響を受けることが考えられた。
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