2008 Fiscal Year Annual Research Report
計算的手法による層状酸化物熱電材料の物性発現機構の解明と材料設計
Project/Area Number |
20760454
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉矢 真人 Osaka University, 大学院・工学研究科, 准教授 (00399601)
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Keywords | 熱電変換材料 / 第一原理計算 / 分子動力学法 / 熱伝導度 / 電子伝導度 / 酸化物 / 格子欠陥 / シミュレーション |
Research Abstract |
本研究では計算科学的手法を用いて、層状酸化物熱電変換材料の特性の起源を明らかにすることを通じて、更なる材料特性の向上あるいは新規高効率熱電変換材料の探索に不可欠な材料設計指針を得ることを目的としている。代表的層状酸化物熱電変換材料であるNa_xCoO_2においては、従来はNaの組成比のみに着目され熱電特性が議論されてきたが、独自の手法である摂動分子動力学法による熱伝導度の理論計算並びに定量数値解析を行った結果、Na量の低下に伴い形成されるNa空孔がNa_xCoO_2の高変換効率に繋がる熱伝導度低下に積極的な役割を果たしていることが、定量的データと共に、初めて明らかになった。また従来は知られていなかったが、Na_xCoO_2中では、主にCoとOの振動が殆どの熱の輸送を担っていることが定量的に明らかになった。また、CoとOの振動は、その大きな質量差にも関わらず、高温においても協調振動しており、これが高温においても電子伝導度がそれほど低下しない理由であることが明らかになった。また、第一原理計算を行った結果、実験的に確認されているように構成元素・イオン種の中で、Na+空孔がエネルギー的に最も形成されやすいことが解った。また、Na^+空孔が形成された際に、残された電子はNa^+空孔に局在し、電気的中性を保つために電子が抜ける際にはNa^+空孔に局在した電子が抜け、Na^+空孔は電子の貯蔵庫としての積極的な役割を果たしていることが解った。更に、Na^+空孔は電子伝導層であるCo-O層から電子を更に引きつけた上で蓄え、逆にCo-O層にp型熱電材料のキャリアであるホールをCo-O層に供給するという、非常に重要な役割を果たしていることが解った。以上のことから、更なる高変換効率熱電材料の材料設計指針として、絶縁層とされているNa層の電子状態・原子振動状態を高度に制御することが不可欠であることが示された。
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