2009 Fiscal Year Annual Research Report
計算的手法による層状酸化物熱電材料の物性発現機構の解明と材料設計
Project/Area Number |
20760454
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉矢 真人 Osaka University, 工学研究科, 准教授 (00399601)
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Keywords | 熱電変換材料 / 酸化物 / 第一原理計算 / 分子動力学法 / 熱伝導度 / ゼーベック係数 / 電子伝導度 / シミュレーション |
Research Abstract |
層状酸化物熱電材料Na_xCoO_2の熱電変換効率の指標となる性能指数を決定する電子的特性と熱的特性の双方に関して、計算材料科学的手法により、その比較的優れた熱電変換特性の発現機構及びその起源を明らかにした。まず熱的特性に着目し、低い熱伝導度を実現する機構解明を摂動分子動力学法を用いた数値計算並びに計算機実験により行った。その結果、低熱伝導化達成のためには、Co^<3+>/Co^<4+>イオンの混合よりもNa空孔が非常に重要な役割を果たしている事が分かった。このNa空孔がNa_xCoO_2中に導入される事により、Na支配のフォノンを乱すのみならず、熱伝導を重荷になっているCoO_2層支配のフォノン散乱を促し、低熱伝導化が実現されている事が明らかになった、また、類似の結晶構造を有するLi_xCoO_2、K_xCoO_2の熱伝導度解析により、アルカリ金属層のカチオンの質量よりも、アルカリ金属イオンのイオン半径の変化に伴うc軸方向のCoO_2層とアルカリ金属層の間隔の変化により、フォノン散乱の2次元性が変化し、CoO_2層支配ファノンが散乱される事が空きからになった。このことからアルカリ金属層への不純物添加による熱伝導制御指針が得られた。他方、熱的特性と共に熱電変換特性を決定する電子的特性についての機構解明を行うため、第一原理計算を交換相関相互作用を一般化勾配近似の枠内として、定量解析を行った。その結果、Na_xCoO_2の構成原子種の中で最も形成されやすい空孔種はNa空孔である事が理論計算の側面から確認された。また、Na空孔は単なる隙間ではなく、過剰な電子を貯え、CoO_2層に正孔を供給するという、p型熱電変換材料の熱電特性発現に最も重要な役割の1つを果たしている事が定量的に示された。このことから絶縁層と言われているNa層の格子欠陥を制御する事により、熱電変換特性制御の可能性が示唆された。
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