2009 Fiscal Year Annual Research Report
シダ植物の無配生殖種における双方向性有性生殖能とその遺伝的多様性の維持機構の解明
Project/Area Number |
20770067
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
篠原 渉 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 助教 (30467443)
|
Keywords | マレーホウビシダ / 無配生殖 / 有性生殖 / 雑種起源 / 母親能力 |
Research Abstract |
2004年のキナバル山の調査から、これまで報告例の無い、大型の葉をもつマレーホウビシダがみつかった。まずキナバル産のマレーホウビシダ類の生殖様式を網羅的に調べた結果、標準的なマレーホウビシダは無配生殖であったのに対し、大型のマレーホウビシダには有性生殖と無配生殖の2種類の生殖様式が含まれていた。さらにそれぞれのタイプの染色体数を調べたところ、標準型の葉で無配生殖をおこなう個体は2n=117の3倍体であり、大型の葉で有性生殖をする個体は2n=78の2倍体、大型の葉で無配生殖をする個体の中には2n=117の3倍体と2n=155の4倍体の2種類の倍数性がみつかった。つまりキナバル山には形態と細胞学的形質で区別できるタイプが少なくとも4つあることがわかった。 これら4タイプ間の生育環境の比較を行ったところ、大型の葉をもつ2倍体有性生殖型と3倍体無配生殖型は乾燥した林道沿いに、大型の葉をもつ4倍体無配生殖型は林床の川沿いに、標準型の葉をもつ3倍体無配生殖型は林冠が開けた川沿いにそれぞれ生育していた。さらに同所的に生育していた大型の葉をもつ2倍体有性生殖型と3倍体無配生殖型の個体別マッピングをおこない、生育環境の差異を比較したところ、3倍体無配生殖型は2倍体有性生殖型よりも林冠の開けて明るくやや乾燥した場所に生育していた。 次に4タイプ間の遺伝的構成を比較したところ、大型の葉をもつ4倍体無配生殖型は標準型の葉をもつ3倍体無配生殖個体と大型の葉をもつ2倍体有性生殖個体の雑種起源であり、葉緑体DNAが3倍体無配生殖型と同じであったことから、3倍体無配生殖個体が母親となっている可能性が示された。これまでシダ植物の無配生殖種が母親能力もつことは報告がない。無配生殖型に受精可能な卵をつくる能力が備わっていれば、無配生殖個体問の交雑、他の有性生殖種との交雑によって遺伝的多様性を集団に持ち込むことが可能になるため非常に重要である。
|
Research Products
(1 results)