Research Abstract |
さまざまな環境に進出し多様化を遂げた植物の大部分が,菌と共生する.本研究では,地上から樹上へと進化した着生植物に着目し,着生植物の進化に菌がどれほど関与したかを推定することを目的に,ラン科クモキリソウ属,ツツジ科スノキ属を対象に,植物の分子系統解析,及び各植物から共生菌を単離し,菌の遺伝子解析や,共生培養により菌が植物の生育に与える影響を調査している. 前年度に引き続きツツジ科スノキ属の系統解析を行った.日本では絶滅危惧植物に指定されている着生種ヤドリコケモモ(Vaccinium amamianum)は,遺伝的には台湾の着生種オオバコケモモ(V.emarginatum)と違いが見られなかった.これらは台湾に分布するV.caudatifoliumと近縁であった. 着生種と地生種の菌種の違いを明らかにするために,ツツジ科スノキ属数種,および,屋久島で地上・樹上の両環境で生育するサクラツツジ,ヤクシマシャクナゲ,アクシバモドキ,ヒカゲツツジから菌を単離し,分子同定および菌の系統解析を行った.結果,解析した植物は系統や生育場所が異なるにもかかわらず,単離された菌はCryptosporiopsis ericaeとその近縁種が高頻度で検出された.単離した菌の一部はITSの塩基配列が完全に一致していた.そのため,今回解析したツツジ科植物では,着生と地生で菌種の大きな変化がない可能性が高い.単離した菌は,今後の共生培養実験に向けて,培養株で維持している.
|