2011 Fiscal Year Annual Research Report
陸域起源物質が河口域の魚類生産に及ぼす影響:時空間変動の定量評価
Project/Area Number |
20780137
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小路 淳 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 准教授 (10397565)
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Keywords | 河口域 / 魚類生産 / 季節変動 / 空間変動 / 陸域起源物質 |
Research Abstract |
2010年度までに実施してきた野外調査を継続した.広島湾に注ぐ2河川(天然河川:天満川,人工河川:太田川放水路)に6ヶ所の調査定点を設け,環境項目の測定と生物採集を実施した.各栄養段階の生物(魚類,餌料生物)および餌料生物の餌起源と考えられている溶存・懸濁態有機物等を季節ごとにサンプリングした.小型地曳き網(高さ2m,幅40m)を用いて10m四方のエリアに生息する魚類の定量的採集を実施した.餌料生物(カイアシ類,ミジンコ類,アミ類など)については濾水計を取り付けたプランクトンネット(口径45cm,目合い0,1m)およびソリ付きネット(開口部60×40cm,目合い0.1mm)を用いて定量的に採集した.水中の有機物の分析には,バンドン採水器を用いた層別採水サンプルを用いた.採集された魚類を90%エタノール中に保存して実験室に持ち帰り,耳石日周輸をもちいて成長解析を実施した.河川内で優占するアユ,スズキをモデル魚種として,河口域における生産速度の定量評価を試みた.スズキについては,ふ化日をもとに5日ごとの同一ふ化日コホートに区分し,成長,死亡率を算出した.さらに,コホートの生産速庚の指標として利用されている成長:死亡率日を河川同で比較した.その結果,成長率には河川間で有意な差が認められなかったが,死亡率と成長:死亡比には有意な差が認められた.過去3年間の調査により,仔稚魚主要餌料生物密度や摂餌状態は河川間で大きく異ならないことが明らかとなっている.本年度に認められた死亡率の差には,河川間での主として被食死亡率の違いが影響して居るもものと推察された.天然河川に比べて人口河川では海水遡上が上流側まで及ぶのにともなって,より多くの海産捕食者が仔稚魚の生息場に分布することがその重要な背景と想定された.
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Research Products
(1 results)