2009 Fiscal Year Annual Research Report
ルーメン細菌の同調調節によるルーメンアシドーシスの防御
Project/Area Number |
20780196
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
浅沼 成人 Meiji University, 農学部, 講師 (50366902)
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Keywords | ルーメンバクテリア / ルーメンアシドーシス / Streptococcus bovis / クォーラムセンシング / 増殖制御ペプチド / ComC / 転写調節 |
Research Abstract |
Streptococcus bovisはウシなどの反芻動物の第一胃やヒトなどの単胃動物の腸管内に生息する乳酸生成菌であるが、菌株によっては宿主に様々な疾病を引き起こすことがあるので、過剰な増殖を抑制することが望ましい。そこで、S.bovisの増殖制御によりルーメンアシドーシスを予防・防御することを目的として、本菌の細胞の同調調節機構を解析した。昨年度は、増殖制御因子の一つであるペプチドフェロモンComCの遺伝子およびタンパクを同定した。本年度は、このペプチドフェロモンの機能解析をおこなった。遺伝子相同組み換え法により、comC遺伝子とその受容体を欠損した菌株を作成した。欠損株をグルコース培地で培養したところ、親株よりも増殖速度が低下した。親株に精製したComCペプチドを添加して培養したところ、増殖速度が増加した。一方、受容体を欠く欠損株にComCを添加しても増殖速度に変化は見られなかった。これらの結果から、ComCはS.bovisの増殖を促進すると考えられた。更に、親株にComCを添加したところ、形質転換効率が増加したので、ComCは増殖だけでなく、形質転換能にも関与すると思われた。二次元電気泳動法とLC-MS/MSを用いて、欠損株と親株におけるタンパク発現の違いを比較したところ、Heat shock protein、DnaK、superoxide dismutaseなどいくつかのタンパクに変動が見られた。これは、S.bovisにおいてComCにより発現が制御されるタンパクがいくつかあることを示す。以上の研究結果から、S.bovisにおいて増殖を制御するペプチドフェロモンが存在することが明らかとなった。今後は、ComCの合成または分解を制御することにより、ルーメン内のComC濃度を適度に調節し、ルーメンアシドーシスを防御する方法について検討する予定である。
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