2009 Fiscal Year Annual Research Report
脳切片培養系を用いた依存性薬物誘発精神障害の分子-神経機構の解明
Project/Area Number |
20790062
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 貴之 Kyoto University, 薬学研究科, 准教授 (30303845)
|
Keywords | 依存性薬物 / MDMA / AMPA受容体 / 脳切片培養系 / セロトニン神経感作 / セロトニントランスポーター / シグナル分子 / 抗うつ薬 |
Research Abstract |
本年度は、まず、縫線核セロトニン神経含有脳切片培養系を用いて、依存性薬物MDMAの持続的処置によるセロトニン遊離増強現象のメカニズムについて検討した。その結果、MDMA長期処置後の増強されたセロトニン遊離は、P/QタイプCa^<2+>チャネル阻害薬、テトロドトキシンやAMPA受容体阻害薬CNQXで阻害されるが、セロトニントランスポーター(SERT)阻害薬のシタロプラムでは阻害されなかった。またこの時、グルタミン酸の遊離量、AMPA受容体GluR1、GluR2の細胞膜上での発現量、リン酸化に変化は認められなかったが、AMPA受容体脱感作抑制薬シクロチアジドにより、セロトニン遊離は顕著に増強された。これらの結果から、MDMA持続的処置後には、AMPA受容体の早い脱感作が阻害され、刺激が持続した結果、活動電位/Ca^<2+>依存的なセロトニン開口放出が促進されたのではないかと考えられる。また、SERT阻害作用を有するSSRI(シタロプラム、パロキセチン、フロキセチン)や三環系抗うつ薬(デシプラミン、イミプラミン)、SNRI(ミルナシプラン、ベンラファキシン)等でも同様のセロトニン遊離増強現象が惹起され、この作用はセロトニン自己受容体の5-HT_<1A>や5-HT_<1B>受容体の脱感作には起因せず、MDMAと同様にAMPA受容体刺激により引き起こされていることを明らかにした。一方、セロトニンそのものや幾つかの選択的セロトニン受容体作動薬、あるいは四環系抗うつ薬(ミアンセリン)やNaSSA(ミルタザピン)などではこのような現象は認められなかった。これらの結果を総合して考え合わせると、SERTはトランスポーターであるにもかかわらず、何らかのシグナル分子として機能し、細胞内外のセロトニン動態を制御するだけでなく、セロトニン神経そのものに対してAMPA受容体の機能亢進等の機能変化をもたらした可能性が考えられる。
|
Research Products
(26 results)