2008 Fiscal Year Annual Research Report
ジフェニルアルシン酸が小脳グルタミナーゼ活性に及ぼす影響について
Project/Area Number |
20790113
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
北 加代子 Teikyo University, 薬学部, 助教 (30407887)
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Keywords | ジフェニルアルシン酸 / グルタミナーゼ / 小脳 |
Research Abstract |
これまで我々は培養細胞を用いた検討から、神栖市地下水ヒ素汚染物質ジフェニルアルシン酸(DPAA)が、グルタミナーゼタンパクの発現低下とそれに伴うグルタミナーゼ酵素活性の低下を引き起こすことを明らかにしてきた。グルタミナーゼは興奮性神経伝達物質グルタミン酸の生合成に関わる重要な酵素であり、活性低下に伴うグルタミン酸の減少は神経伝達に影響を与えると考えられる。特に小脳はグルタミン酸作動性神経が豊富に存在し、また神栖市の患者には、歩行困難、平衡感覚の異常など小脳に起因すると思われる症状がみられたことから、DPAAによるグルタミナーゼの低下が中枢神経症状発症の一因の可能性も考えられる。そこで本研究では、DPAAが個体レベルにおいて小脳のグルタミナーゼに影響を与えるかどうか検討するため、DPAA長期投与マウスの小脳グルタミナーゼについて行動試験と併せて検討した。ICR系雄性マウスに神栖市地下水中で検出されたDPAAの最高濃度(15 ppm)を基準に、0、7.5、15、30 ppmの濃度のDPAAを飲料水から自由摂取させ、協調的運動の指標となるロータ・ロッド試験を行ったところ、15 ppm、24週投与群において成績の有意な低下がみられ、DPAAがマウスの運動機能に影響を与える可能性が示された。そこで24週投与マウスの小脳グルタミナーゼを調べたところ、30 ppm投与群おいてグルタミナーゼ活性の有意な低下が認められた。このことからDPAAは培養細胞だけでなく、DPAAを投与した個体の小脳グルタミナーゼにも影響を与える可能性が考えられた。しかし、30ppm投与群ではロータ・ロッド試験成績の低下は認められず、現時点では協調的運動能力の低下にグルタミナーゼ活性の低下が関与するか明確な結論に至っていない。引き続きDPAAの投与を継続し、運動試験の成績と小脳グルタミナーゼ活性の関連性について検討する予定である。
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