2009 Fiscal Year Annual Research Report
ジフェニルアルシン酸が小脳グルタミナーゼ活性に及ぼす影響について
Project/Area Number |
20790113
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
北 加代子 Teikyo University, 薬学部, 助教 (30407887)
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Keywords | ジフェニルアルシン酸 / グルタミナーゼ / 小脳 |
Research Abstract |
これまで我々は、培養細胞を用いた検討から、神栖市地下水ヒ素汚染物質ジフェニルアルシン酸(DPAA)がグルタミナーゼタンパクの発現低下を引き起こす現象を明らかにしている。グルタミナーゼは中枢神経系において興奮性神経伝達物質グルタミン酸の供給に関わる重要な酵素であることから、汚染地域の患者にみられた小脳症状の発症に関与する可能性も十分考えられる。そこで本研究では、DPAAによるグルタミナーゼタンパク発現低下と小脳症状の関係を解明することを目的に、まずDPAAをマウスに投与し、小脳症状がみられた時点での小脳内グルタミナーゼ活性およびグルタミナーゼタンパク発現レベルを解析した。小脳機能の異常によって協調的運動能力の低下がみられることから、マウスにロータ・ロッドおよびブリッジテストによる運動試験を課したところ、DPAA投与期間に依存した運動成績の低下がみられた。しかし、小脳内のグルタミナーゼ活性およびグルタミナーゼタンパクに顕著な変化はみられなかった。また、培養細胞を用いてグルタミナーゼタンパク低下作用を示すヒ素化合物を解析したところ、DPAAの他にも神栖市の地下水中で検出されたフェニルアルソン酸(PAA)や、汚染地域で栽培された米中から検出されたフェニルメチルアルシン酸(PMAA)にグルタミナーゼタンパク低下作用が認められた。以上のことから、DPAAによる協調的運動能力の低下と小脳内グルタミナーゼタンパク低下との関連性を見出すことはできなかったが、新たに神栖市の汚染地域で検出された2種類のフェニルヒ素化合物にグルタミナーゼタンパク低下作用が認められた。このことは、フェニルヒ素化合物がグルタミナーゼを介する経路に何らかの影響を与える可能性を示唆するものであり、今後は小脳の局所的なグルタミナーゼタンパク低下の可能性も含め、より詳細な検討が必要であると思われる。
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