2008 Fiscal Year Annual Research Report
大麻主成分の臨床適性使用に向けた予防薬学的基礎研究
Project/Area Number |
20790149
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Research Institution | Hokuriku University |
Principal Investigator |
竹田 修三 Hokuriku University, 薬学部, 研究員 (00460379)
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Keywords | 大麻 / 乳がん / カンナビノイド / テトラヒドロカンナビノール |
Research Abstract |
大麻主成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)は我が国では厳しい法規制下にあるが、海外ではがん患者の悪心・嘔吐予防などの目的で臨床使用されている。このようにTHCはがん患者の悪心・嘔吐予防としての薬効を示すが、THCががん細胞増殖自体に与える影響の有無は不明であった。THCはカンナビノイド受容体(CB受容体)に作用しその薬理作用を発揮することやCB受容体の発現レベルが腫瘍の進行程度に応じて変動することが報告されている。先に我々は、大麻草抽出物(THCを豊富に含む)がMCF-7ヒト乳がん細胞増殖を促進することを見出している。 本研究は医薬品としてのTHCに注目し、THCがヒト乳がん細胞増殖に影響を及ぼす可能性について検証することを目的とした。その結果、THCはCB受容体欠損下においてMCF-7細胞増殖を促進することが明らかになった。THCによる細胞増殖促進は乳がん特異的に発現する因子のレベル増加を伴うものであった。この因子は乳がんの予後を規定する標的として注目されている。最近、がん細胞増殖がCB受容体の発現レベルの低下により亢進することが報告された。この知見と本研究で得られた成果を併せ考察すると、CB受容体は腫瘍細胞の増殖を制御している可能性があり、CB受容体の発現低下によりその制御が解消されたがん細胞、特に乳がん細胞はTHC処理依存的に増殖するというメカニズムが推察された。 本研究では、CB受容体の発現レベルの多寡に注目しTHCが乳がん細胞増殖に与える影響を検討した。今後は、THCによる乳がん細胞増殖の促進メカニズムをより詳細に解析することや生理的な乳がん細胞増殖の促進成分であるホルモンとTHCとの相互作用に関する研究を実施する予定である。本研究はTHCの臨床適正使用の確立を目的として、がん患者にTHCが投薬された際、その優れた薬効と共に起こりうる副作用を未然に防ぐことを目的とした予防薬学的基礎研究である。
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Research Products
(5 results)