2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20790352
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 晋弥 The University of Tokyo, 医科学研究所, 特任研究員 (90466839)
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Keywords | 新型インフルエンザ / レセプター認識 |
Research Abstract |
インフルエンザウイルスの感染は、ヘマグルチニン[HA]がレセプターと結合して始まる。ヒトのウイルスは主にヒト型レセプターを認識し、鳥のウイルスは鳥型レセプターを認識する。このレセプター特異性の違いが宿主域を大きく左右する。季節性のヒトH3N2ウイルスのHAタンパク質の変遷を解析したところ、1968年のヒト社会での出現以降、蛋白質表面の正電荷が蓄積しており、それは鳥のH3N2には見られない特徴であった。そこで鳥のウイルスや1968年当初と、近年のヒト分離株のレセプター結合において質的な違いがあるのか否かを調べた。1968年の株や鳥分離株は塩濃度に依存しない結合力でレセプターと結合していたが、近年のヒト分離株は塩濃度に依存していたことから、レセプター認識が電荷に依存したものに変化したことが示唆された。これはヒトへの適応の一端であると推測された。更に、ヒト分離H5N1ウイルスのHAの変異を調べたところ、塩基性アミノ酸への置換が多くの株でみられ、位置的にもヒトH3N2ウイルスで塩基性置換が起きてきた場所と酷似していた。それらの株は、ヒト型レセプターを認識する株が多く、塩濃度に依存した結合力でレセプター結合を行っていた。つまり、H5N1ウイルスも季節性のH3N2ウイルスと似たヒトへの適応をする可能性が示唆された。 更に、表面電荷とレセプター結合との関係の一般化を図るために、ヒト型レセプターを認識しない株のHAの表面電荷パターンを、ヒト型レセプターを認識する株の表面電荷パターンと一致させたところ、ヒト型レセプターを認識するようになった。このことから、ヒトへの適応の際のレセプター認識の変化を考察する上で、HAの表面電荷を解析することも重要なアプローチであることが分かった。
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Research Products
(3 results)