2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20790639
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀越 桃子 The University of Tokyo, 医学部・附属病院, 助教 (70422300)
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Keywords | 2型糖尿病 / 遺伝子 / インスリン分泌 |
Research Abstract |
【背景と目的】2006年、複数の欧米のGWAS(ゲノムワイド関連解析)によりTcf712は2型糖尿病の主要な原因遺伝子の1つとして同定され、その結果は日本人においても追試されている。Tcf712はWntシグナルの一翼を担う転写因子であり,細胞の癌化や諸臓器の発生・分化に重要な役割を果たすことが知られていたが,糖代謝との関連に注目した検討は皆無であった。Tcf712の全身欠損マウスが出生後間もなく死亡してしまうことより、本研究ではTcf712が膵β細胞で担うTcf712遺伝子役割をin vivoで明らかにすることを目的として,Tcf712の機能を膵β細胞で低下させたモデル動物を作成し,その表現型を解析した。またヒトにおける糖代謝指標とTcf712遺伝子型との関係についても検討した。【方法】[マウス]Tcf712のdominant negative型変異(DN-Tcf)をRIPプロモーター(Rat Insulin Promoter)の下流につなぐコンストラクトを構築しトランスジェニックマウス(RIP-DNTcf-Tg)を作成した。[ヒト]54人の糖負荷試験施行者においてTCF7L2遺伝子型と血糖・インスリン値との相関を検討した。【結果】genotype PCRにより173匹のfounderから6匹のトランスジェニックマウスを選定し,各々でtransgeneのgermline transmissionを確認した。このうちDN-Tcfの発現量が内因性のTcf712の発現量の10倍以上と推定される独立した2つのラインの検討より,RIP-DNTcf-Tg群は野生型(Wt)群と比較して体重は同程度であったが,随時血糖値は高値を示した。またインスリン感受性は同程度であったが、経口糖負荷試験ではRIP-DNTcf-Tg群はWt群と比較して,糖負荷後15分と30分の血中インスリン値が低下しており,明確な高血糖を呈した。ヒトにおいては糖尿病リスクアリルをホモに持つヒトで、90分血糖値が有意に上昇、120分インスリン値が有意に低下していた。【結論と考察】膵β細胞におけるTcf712の機能低下はインスリン分泌低下による耐糖能異常を惹起した。今後はTcf712の機能低下が,膵β細胞の発生・分化や成体での膵β細胞量調節に及ぼす影響,ならびにグルコース応答性のインスリン分泌能やインクレチン応答性のインスリン分泌能に及ぼす影響について,検討を進める予定である。
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