2009 Fiscal Year Annual Research Report
悪性リンパ腫関連転座を保有するリンパ球のマウス生体内における性状・動態解析
Project/Area Number |
20790673
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
錦織 桃子 Kyoto University, 医学研究科, 助教 (60378635)
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Keywords | 悪性リンパ腫 / 染色体転座 |
Research Abstract |
ヒトにおけるリンパ腫が形成される前段階のBCL2転座陽性B細胞を模倣するモデルとして、BCL2遺伝子をCD19プロモータ下に発現するレンチウィルスベクターをマウスの骨髄幹細胞に導入後、致死的放射線照射マウスに移植してキメラマウスを作製し実験を継続した。本実験系では従来のBCL2トランスジェニックマウスとは異なり、BCL2転座模倣細胞の動態を健常個体内において調べることができるという利点がある。キメラマウスの脾臓細胞を用いてBCL2高発現B細胞の表面形質を解析したところ、辺縁帯B細胞への分化抑制が観察され、濾胞B細胞への分化指向性を呈することが示された。一方、BCL2高発現B細胞が細胞環境により性状の変化を生じるかどうかを調べるために、Eμ-BCL2トランスジェニックマウスのB細胞を別個体のトランスジェニックマウスと同系野生型マウスに接種し細胞の性状を比較した。その結果、野生型マウスに接種した群の方が細胞周期が早く、免疫グロブリン遺伝子内に導入されるsomatic hypermutation(遺伝子超変異)の割合も高くなる傾向が示された。これらの知見から、従来より悪性リンパ腫の転座モデルとして使用されているEμ-BCL2トランスジェニックマウスにおいては、すべてのB細胞でBCL2が高発現しているために体内のBリンパ球の環境が変化しており、そのためにリンパ腫の形成が観察されにくいことが推測された。また、BCL2高発現B細胞はin vitro刺激下での形質細胞への分化が抑制される傾向があり、BCL2転座陽性B細胞のこうした独特の分化指向性が、特定の分化段階のB細胞を起源とするリンパ腫の発症に関与することが考えられた。 また現在、本キメラマウス系を用いて同様にCyclin D1の転座モデルマウスも作出し、分化指向性その他の解析を進めているところである。
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Research Products
(5 results)