Research Abstract |
レビー小体型認知症は,アルツハイマー型認知症についで二番目に頻度が高いとされるが, その診断は困難な場合が少なくない。今年度, 60例を超える症例に関して, 幻視, パーキンソン症状, 認知機能の変動性, 薬剤過敏性, 起立性低血圧などの臨床症状, 記憶力, 注意力, 見当識, 視空間認知など各種神経心理学的検査の結果, 頭部MRI, 脳血流SPECT, MIBG心筋シンチグラフィーなどの画像検査の結果をデータベース化し, 各種検査や画像統計解析ソフトの診断学的有用性について検討を行い, また, 臨床症状と検査データの相関について解析し, その成果を海外誌に論文として発表した。次年度に計画している血液等の患者サンプルを用いた研究に向けた準備として, 症例の蓄積と臨床症状や診断の吟味を行った。In vitroの実験として, ラット胎仔大脳皮質より培養した神経細胞を用いて, レビー小体型認知症に見られる様々な精神症状や睡眠障害への効果が報告されている漢方薬・抑肝散について, アルツハイマー型認知症の原因物質であるアミロイドβ蛋白による神経障害に対する神経保護効果を見出した。また, ラット胎仔から得た神経幹細胞を用いて, 増殖(BrdU-ELISA), 分化(MAP2/Tuj1-ELISA, および免疫染色陽性細胞のカウント), 遊走能(Boyden chamber法)に対する抑肝散の効果を調べた。その結果, 抑肝散は, 神経幹細胞の増殖や遊走に有意な作用を示さない一方で, 神経細胞への分化を促進する効果がある事がわかった。更に, 重篤な薬剤過敏性を特徴的臨床症状とするレビー小体型認知症患者に見られる幻覚や妄想に対して有効性が報告されている非定形抗精神病薬を用いた実験で, これらの薬剤が, 神経幹細胞から神経細胞への分化を促進する働きや, 小胞体ストレス条件で保護的効果を有する事を見出した。
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