2009 Fiscal Year Annual Research Report
放射線誘発肺線維症の分子メカニズムの解明とその抑制法の開発に関する実験的研究
Project/Area Number |
20790922
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
加藤 弘之 Gunma University, 重粒子線医学推進機構, 助教 (30334121)
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Keywords | 放射線,X線,粒子線 / 放射線 / トランスリレーショナルリサーチ / 放射線防護 / 放射線肺臓炎 |
Research Abstract |
放射線照射における生体の防御機能の一環として,それぞれの組織・臓器に炎症および線維化が生じることが知られている.しかしながら,がん患者に対する放射線治療では,正常組織の線維化による障害の程度を可能な限り軽減することは,治療に伴う有害事象の発生を抑制し,治療の成功を決定づける重要な因子の1つである.放射線誘発肺線維症は,肺がんや乳がんなどの胸部の悪性腫瘍に対する放射線治療を行う際に,もっとも重要視される有害事象であり,これが広範囲かつ重度に発生した場合には,治療後の呼吸機能を大きく損なうことになる.この放射線誘発肺線維症は,経験的に数か月から数年の潜伏期をもって生じることが知られているが,その経過が長期間にわたることもあり,多くの研究がなされているにも関わらず,放射線誘発肺線維症の形成機序については未だに不明な点が多い.このため,放射線誘発肺線維症を軽減させる手法は未だ確立していない.本研究の目的は,線維化モデルであるC57BL/6マウスを用い,ウリナスタチン投与による肺照射後の放射線誘発肺線維症を軽減させる可能性およびその至適な投与時期について明らかにすることである.本研究により,放射線照射後のウリナスタチン投与によって,放射線誘発肺線維症の程度を軽減できること,また,この軽減効果を得るにはウリナスタチンの投与時期が重要であることが示された.効果が得られたウリナスタチンの投与時期は,マウス肺への照射後にTGF-β mRNAの発現レベルが増加する時期に一致していること,肺線維症の程度とTGF-β陽性細胞の発現率に有意な正の相関関係が示されていることなどから,ウリナスタチン投与によってTGF-βの発現が抑制され,その結果として放射線誘発肺線維症が軽減している可能性が考えられた.
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Research Products
(1 results)