2008 Fiscal Year Annual Research Report
心筋虚血再灌流障害における水素ガスの抗酸化効果の検討
Project/Area Number |
20791082
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
古賀 寛教 Oita University, 医学部, 医員 (50468013)
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Keywords | 心筋虚血 / フリーラジカル / 電子スピン共鳴 / 水素 |
Research Abstract |
予防、及び治療法としての水素の投与効果を検討するにあたり、まずは爆発性のある水素ガスを、安全に供給できる水素投与系の確立が不可欠となる。20年度は、ラット動物モデルにおいて、吸入および水素溶存溶液の静脈内投与法確立のための研究を行った。吸入法では、有効治療域とされ、爆発下限濃度でもある4%を確実に投与する(水素の比重が非常に小さく、当初は、均一なミキシング、安定した濃度での供給に難渋した)ための、混合比、回路構成、また、経時的に回路供給水素濃度をモニタリングできるシステム(サイドストリーム方式で吸引し、濃度測定器で測定)を構築し、安全な人工呼吸器での投与を可能にした。水素溶存溶液に関しては、生理食塩水、細胞外液の水素バブリングによる溶存を行い、ガスクロマトグラフィーを用い確実な水素溶存を確認した。続いて、心筋の虚血再灌流に先立ち、まずはより簡易に作成できる腎、腸管の虚血再灌流モデルでの投与を行い、詳細な水素の体内動態、投与法、投与タイミングの違いによる効果を検討しはじめたところである。今後、血中、各組織中の水素濃度をガスクロマトグラフィーを用いて測定し、治療効果との関連を分析する予定である。 また、水素の投与効果の機序として挙げられているヒドロキシルラジカル消去作用を、より厳密に分析するために電子スピン共鳴(ESR)装置の改良を行った。これまでのFenton反応による発生系に加え、紫外線照射による物理的な発生系の確立を行い、重金属を含まない、よりクリアな条件でのラジカル消去能の分析を可能にした。新しいスピントラップ剤であるCYPMPOを用い、ラジカルの定量法を確立し、各物質のラジカル消去能の解析を行っている。 これら水素投与系の確立や、機序解明のための機器改良は、水素の予防、治療法としての可能性を探る必要不可欠な基礎段階であり、今後、最終的には臨床応用を視野に入れた研究を継続していく予定である。
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