Research Abstract |
高分子材料の重合促進と架橋反応を起こすことが知られている低エネルギー電子線(Low-Energy Electron Beam,以下,LEB)を歯科用メチルメタクリレート系樹脂(以下,MMA樹脂)である義歯床用加熱重合レジンや義歯のリライニング用即時重合レジンに照射すると,残留MMAモノマーが減少することが報告されている.そこで本実験では,3種類のレジンにLEBを照射し,未照射と照射後の飽和吸水量とロックウェル硬さを測定して,LEB照射が歯科用MMA樹脂の物性におよぼす影響を検討した.試験材料には加熱重合レジン1種類(アクロンクリア,ジーシー,以下,AC)および即時重合レジン2種類(ユニファストIIクリア,ジーシー,以下,UIIおよびリベースH,デンツプライ三金,以下,RH)を用いた.試験片の形状は吸水試験では一辺20mm,厘さ4mmとし,ロックウェル硬さ試験では一辺20mm,厚さ8mmとした.試験片の数は,LEB照射条件毎に吸水試験用は5鋼,硬さ試験用は3個とした.LEBはLIGHTBEAM-LEC110/15/70L(岩崎電気)を用い,窒素ガス雰囲気中にて,加速電圧110kV,吸収線量135kGyまたは270kGyの条件で試験片両面に照射した.吸水試験の吸収線量の条件は270kGy,硬さ試験については135kGy,270kGyとした.結果、吸水試験における飽和吸水率は未照射,270kGy照射において,AC:1.56%,1.36%.UII:1.50%,1.58%.RH:1.70%,1.79%であった.今回の試験結果からは,歯科用MMA樹脂の吸水性に対するLEB照射の影響は確認できなかった.ロックウェル硬さ試験からはRHの未照射と135kGy照射の条件間で有意差が認められたが,全体の傾向からLEB照射は硬さにはあまり影響しないものと考えられる.
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