2009 Fiscal Year Annual Research Report
人種マイノリティ統治技術の国内外への移転に関する歴史研究:米国の学校教育を事例に
Project/Area Number |
20810040
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
宮下 敬志 Ritsumeikan University, 衣笠総合研究機構, 研究員 (50509346)
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Keywords | アメリカ史 / 西洋史 / 教育史 / エスニック / 先住民史 / アメリカ:ハワイ王国:日本:フィリピン / 帝国主義 / 人種差別主義 |
Research Abstract |
本研究は、アメリカにおける人種マイノリティ教育実践が、19世紀末以降に内外の植民地に転用していったことを明らかにすることを目的とした。具体的には、19世紀半ばのハワイ先住民教育を参考に作られたアメリカ本土のアフリカ人・先住民(インディアン)学校における手作業教育偏重の教育実践が、官僚や教育者の移動や交流を通じて、フィリピンや日本の先住民教育などに地域を越えて転用していったことについて、歴史学的な実証分析の手法を用いて調査することを目指した。 本研究が注目した研究対象は、ハワイ人の教育機関だったヒロ学校、アメリカ先住民の教育機関だったハンプトン農業師範学校とカーライルインディアン学校、米西戦争以降にアメリカ政府がフィリピンに設立した実業学校、アイヌの人々の教育機関だった虻田実業補習学校である。これらの学校に関する政府資料や学校資料の一部は未整理であったが、科学研究費を利用したアメリカ合衆国や北海道での現地調査によって、新たな資料を発見することができた。 収集した資料を利用して、本研究は、第一に、これら両校の教員の人的交流関係を明らかにできた。第二に、ハンプトンの人種差別主義的なカリキュラムや教育方法の影響関係、そして教育が生徒に与えた影響などを明らかにできた。 帝国主義時代の列強による環太平洋地域の先住民支配に地域を超えた類似性があることは、これまで研究者に漠然と意識されてきた。しかし、本研究は、先住民教育を事例にして、その政策的つながりを人的交流関係などから具体的に実証しており、その点に最大の意義がある。
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