2008 Fiscal Year Annual Research Report
平安鎌倉期における歌学と仏典注釈の相互交流についての学際的研究
Project/Area Number |
20820017
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
岡崎 真紀子 Shizuoka University, 人文学部, 准教授 (30515408)
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Keywords | 日本古典文学 / 平安時代 / 鎌倉時代 / 歌学 / 和歌 / 仏典注釈 / 悉曇 / 韻学 |
Research Abstract |
平安後期から鎌倉期にかけての歌学関係の資料と、悉曇学を中心とする仏典注釈の資料の双方について、収集と読み込みにあたり、両者がどのように相互に関係しているかを具体的に検討した。まず『日本歌学大系』(風間書房)や『中世古今集注釈書解題』(赤尾照文堂)に翻刻されている歌学書をとりあげ、内容の読解をすすめながら、悉曇学に由来する五音相通説にもとづく語義解釈が見られる部分を抜き出すことによって、歌学と仏典注釈の関係を実証できるデータを収集した。次に、仙覚『万葉集註釈』について、完本としては善本とされる国文学研究資料館蔵本の書誌調査をおこなった。そのうえで、国文学研究資料館蔵本を底本として、影印が刊行されている仁和寺蔵本(京都大学国語国文資料叢書)と冷泉家蔵本(冷泉家時雨亭文庫)の本文と比較しながら、『万葉集註釈』を精読した。その過程で、仙覚の歌学が悉曇学と深く結びついていることが具体的に明らかとなり、従来の研究にない新たな視野を提示できた。また、馬渕和夫『日本韻学史の研究』(日本学術振興会)を参照しつつ、『悉曇章の研究』(勉誠出版)および『高山寺悉曇資料』(東京大学出版会)に載る資料の検討を行い、悉曇学への理解を深めた。当初の研究計画では、地方への資料調査を複数回行う予定であったが、時間の制約もあり、予定通りには遂行できなかった。だがその代わりに、活字や影印によって読める資料を対象とした考察とデータ収集は、当初の目標以上の大きな成果をあげることができた。総じて、研究の進行状況は順調であると言える。
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