2008 Fiscal Year Annual Research Report
トポロジカルな比較環境文学研究の確立-冷戦期の日米作家を中心に
Project/Area Number |
20820040
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
波戸岡 景太 Meiji University, 理工学部, 講師 (90459991)
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Keywords | 環境文学 / 日米比較文学 / 環境意識史 |
Research Abstract |
今年度は、愛媛県およびカリフォルニア州で、本研究が中心的に扱う大江健三郎作品とトマス・ピンチョン作品に関するフィールドワークを実施した。愛媛県の旧大瀬では、大江と関わりの深い方々にインタビューを行い、四国の森の変化が住民たちの生活に及ぼした影響の一端を調査した。このとき、従来の研究者がしてきたような「大江の過去」を中心とする聴き取りは行わず、大江と同時代を生きてきた人々の「森」にまつわる声を中心にインタビューをすすめていったことは特筆に値する。また、カリフォルニア州のロスアンジェルスでは、アメリカの自然環境に関する文献を博物館で収集すると同時に、ピンチョンの小説『ヴァインランド』の舞台となった太平洋岸の植生群をつぶさに観察することができた。小説上の架空の土地と現実の土地との差異を、テキスト読解と現地調査によって浮き彫りにする作業は、本小説のみならず、来年度に計画している、ピンチョンの自伝的データをふんだんに取り入れた長編小説『重力の虹』の読解にも有益な方法論を提示してくれた。また、大江とピンチョンの直接的な比較はもとより、両作家の「森」をめぐる想像力を取り巻く日米の作家/クリエーター群の研究として、堀田善衛、宮崎駿(ジブリ)、ケン・キージーらの文献を精読することで、来年度への論文執筆に備えた。さらに、関連する学会発表として、08年10月に行われた日本アメリカ文学会全国大会および同年11月に中国の武漢で開催された環境文学研究の国際学会で口頭発表を行った。
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Research Products
(2 results)