2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20830008
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
荒木 剛 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 助教 (20510556)
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Keywords | 侵入思考 / 自我異和性 / 思考抑制 / 認知評価 / コーピング方略 |
Research Abstract |
様々な精神疾患における中核的な症状の一つに、意識への不快な思考(妄想、強迫観念など)の侵入がある。これらは、総じて侵入思考と呼ばれている。精神疾患患者は、侵入思考に対して自我異和的な認知評価を行い、思考抑制(思考を"押さえ込む")に代表されるような不適切な抑制的コーピングを行っている可能性が高い。自我異和的な認知評価とは、侵入思考の内容が自らの道徳観や価値観と相容れない異質なものであるという評価のことを指す。思考抑制はリバウンド現象を引き起こして侵入思考の発生を増加させることが知られている。しかし、自我異和的な認知評価と思考抑制の関係を実証的に検討した研究はまだ行われていない。 今年度は、昨年度に引き続き、侵入思考の発生に対する自我異和的な認知評価およびコーピング方略のひとつとしての思考抑制の関係について、縦断的デザインを用いた質問紙調査を実施した。調査は約1カ月の間隔を空けて2回実施され、初回の調査では自我異和的な認知評価とコーピング方略が、2回目の調査で強迫症状と抑うつ症状が測定された。分析の結果、自我異和的な認知評価の中でも、特に「思考の統制困難/被操作感」および「道徳観との不一致」が抑制的コーピングに結び付きやすく、一カ月後の侵入思考の発生頻度の増加や強迫症状および抑うつ症状の悪化を導くことが示唆された。この結果は侵入思考に対する自我異和的な認知評価が様々な精神症状の悪化につながる直接的な要因のひとつであることを表しており、効果的な介入プログラムを構想していくうえで自我異和感に着目していく必要があることを強く示すものと言える。
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Research Products
(2 results)