2009 Fiscal Year Annual Research Report
リスク社会におけるライフイベントと家族の適応に関する研究―縦断的データを用いて
Project/Area Number |
20830022
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 あかね The University of Tokyo, 社会科学研究所, 准教授 (20470106)
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Keywords | リスク社会 / ライフイベント / パネル調査 / 出生 / 離婚 / 失業 / 家族ストレス論 / ライフコース論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、家族ストレス論およびライフコース論の枠組みに依拠し、ライフイベントが発生した場合に家族がどのように対処・適応するかを実証的に研究することにある。最終年度となる平成21年度は、財団法人家計経済研究所の「消費生活に関するパネル調査」の分析と成果の発表をおこなった。パネル調査は同一個人に継続的に調査を行っているため、意識や実態の変化をより適切に測定できる特長を持つ。 以下の3つのイベントに注目した。(1)出産について。出産は多くの家族が経験する望ましいイベントだが、出産を機に妻の結婚生活満足度は低下する。結婚生活の変化に注目することは、夫婦のみならず、子どもの発達を考えるうえでも重要だ。親との同居などサポートの多寡によって夫婦関係満足度の低下が緩和されるかを検証したが、効果は見られなかった。妻の多くが出産を機に退職し、子どもの手が離れたら再就職することで仕事と家庭の「調整」、すなわち対処・適応がなされているためと解釈できる。(2)離婚について。離婚が増加している。女性が経済的に自立するようになったので離婚が増えたといわれるが、現実は異なる。離婚した女性は、離婚の後だけではなく離婚の前から経済的に苦しい。親に頼れるとは限らないため、多くの場合、貧困のリスクは高く、適応は困難である。(3)失業について。産業構造の変化に伴って失業率が高くなっており、失業に注目する意義は大きい。リスク社会では失業は個人的な経験になるといわれるが、日本では家族の対処に注目する必要性は高い。夫が失業した家族は預貯金を取り崩したり、妻の就労によって対処する。一方、夫の家事・育児時間は増えない。 女性が生涯を通して安定した職業キャリアを形成できるようにすること、さらに社会全体で子育てや雇用に伴うリスクを分かちあう仕組みを再構築することが必要だと示唆される。
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Research Products
(3 results)