2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20830052
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井上 真由美 Kobe University, 経済経営研究所, 講師 (30452486)
|
Keywords | 企業統治 / アクティビストファンド / 安定株主 |
Research Abstract |
本研究は、アクティビストファンドの株式大量保有や提案に直面している企業にインタビュー調査を行うことにより、<日本の経営者とは保身を追求する存在なのか>、<企業価値の向上に関与するファンドの実際の役割とはどのようなものであるのか>、といったことに示唆を与えることを目的とする。また、アクティビストファンドをはじめとする株主からの影響を排除するために非公開化した企業に対しても、インタビュー調査を行うことで、株式公開・非公開化のメリット、デメリットとは何であるかを考察する。 21年度は、あるアクティビストファンドによって株式を大量保有された企業に対し、ファンドが経営者の事業・投資方針や利益処分に関する意思決定にどのような影響を及ぼしたのか調査を行った。結果は次のとおりであった。(1)ファシドが経営上の意思決定に影響を与えたととはほとんどなく、業績が向上していたとしてもそれはファンドによる株式保有効果とはいえない。(2)9社の中には、ファンドからROEを高めるための自社株取得および償却、増配、不採算事業からめ撤退等の提案を受けた企業があった。しかし、提案のほどんどが採用されることはなかった。その理由は、企業が長期的な経営方針にもとづいて事業運営を行っているのに対し、ファンドはその内容を十分に理解することなく、短期的なリターンの回収を重視する傾向があったからである。(3)配当政策に関する経営陣の方針は、ファンドの存在からほとんど影響を受けていないことがわかった。それぞれの企業が独自の指標にもとづいて配当額を決定し、長期的に安定した配当を維持する方針を採っていた。特に、ファンドによる買収の可能性を意識するようになった企業では、取引先、金融機関、創業者親族、会社OBを中心とする安定株主の構築を図り、ファンドというよりは、むしろ彼らを意識して配当政策を決定していた。
|
Research Products
(2 results)