2009 Fiscal Year Annual Research Report
中南米の教育改革の成否をめぐる諸アクターの相互作用メカニズムに関する実証的研究
Project/Area Number |
20830057
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岡村 美由規 Hiroshima University, 教育開発国際協力研究センター, 研究員 (50467784)
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Keywords | 中南米地域 / 教育改革 / 教員組合 / 教育政策 / 教育開発 / キリスト教会 |
Research Abstract |
最終年度となる本年は、ボリビア、ペルー、チリの3力国で質問紙と聞き取りの実地調査を行なった。今年度の研究成果として、ボリビアにおける教職と専門性意識に関し行政側と教師側の対比をさせながら2つの学会(比較教育学会、国際開発学会)での発表、大学紀要(広島大学)へ投稿した。来年度も引き続き学会(比較教育学会国際開発学会)や学会誌(日本比較教育学会等)に成果を発表すべく準備を進めている。これらの研究では、本研究の課題である教育改革・教育政策の成否に関わるメカニズムを明らかにするため教育政策を実施する主要なアクターたち(教育省、教員組合、教師個人、キリスト教会など)の関係性及び教育改革に対する意識について分析を行なった。当初はアクターたちの行動を通して観察できる関係性に重点をおいて聞き取り調査を行なっていたが、次第に公教育の意義、それの社会政策における位置づけ、公教育の直接的実施者である教師の役割・像の3点に関し主要なアクターたちの意識や認識が一致しておらず、それが「イデオロギーの相違」となって関係性を対決的なものに導きやすいことが明らかになってきた。そこで本年の実地調査では教師を対象に質問紙調査を行ない上述の3点について分析し、かつこの「イデオロギーの相違」を解消/強調/増幅するメカニズムについて社会的装置に注目して分析を進めている。さらに本研究から派生して教育政策立案・実施メカニズムについての課題が見えてきた。今日の教育改革では唱導的に「教育政策への市民社会の参加(参与)」が主張されるが、理論的検討がないままメカニズムが導入された場合は、メカニズム(=法制度)が主要なアクターたちの政治力や相互関係に何らかの変化を与えるため、政策が当初の期待どおりの成果が挙がらないばかりでなく、時に後退する可能性があるという点が示唆された。これは平成22-23年度科学研究費補助金(若手B)「途上国の教育「参加」と「教育の質向上」の再検討:教育政策の政治性と公共価値」にて引き続き研究を進める。
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