2008 Fiscal Year Annual Research Report
コモン・ロー・システム発展史研究--日本民法典への影響を手がかりに--
Project/Area Number |
20830097
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
高 友希子 Hosei University, 法学部, 准教授 (40454962)
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Keywords | マスター・アンド・サーヴァント / 独立契約者 / 民法716条 |
Research Abstract |
平成20年度は、マスター・アンド・サーヴァント関係法理の中でも716条に直結するとみなしうる独立契約者概念の形成・展開過程を中心に検討を進めた。その結果、19世紀初頭までみられるマスター・アンド・サーヴァント関係の基本原則とは、サーヴァントの行為については基本的にマスターがすべて責任を負う、すなわちマスター・アンド・サーヴァント関係が成立する場合であれば、サーヴァントは責任を負わなければならないというものであった。契約関係が多少複雑化した後も、上級者・最終権限者が責任を負うことで対応可能であったが、社会状況の変化により、誰のサーヴァントでもない者が、従来ならマスターに該当しない者ヘサーヴィスを提供するようになると、それまで運用されてきた原則では裁判所も対応できなくなり、こうしてサーヴィス提供者による不法行為に対して誰が責任を負うべきかという問題が発生する。この問題を初めて正面から扱ったのはLaugher v. Pointer (1826)であったが、英国法曹界最高峰の知識を集結しても結論は出なかった。Quarman v. Burnett (1840)は、確かにLaugher v. Pointerにおいて示された見解をもとに一定の方向を示したが、判例を丹念に調べると、後続する判例が独立契約者という新しい概念を形成していった事実が明らかになった。以上については、ローマ法研究会(平成21年3月17日)で報告。 また3月下旬には、インズ・オブ・コート(716条の起草者穂積陳重が1876-8年に留学、バリスタ資格を付与された法曹学院)に赴き、本来、部外者は利用できない同所の資料を、今回は特別に許可を得て閲覧、今後の検討に値する興味深い資料を発見した。
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