2009 Fiscal Year Annual Research Report
コモン・ロー・システム発展史研究――日本民法典への影響を手がかりに――
Project/Area Number |
20830097
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
高 友希子 Hosei University, 法学部, 准教授 (40454962)
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Keywords | 独立契約者 / マスター・アンド・サーヴァント / 民法716条 / 穂積陳重 / 代位責任 |
Research Abstract |
本研究の目的である、明治期における日本民法典への影響という観点を中心に、コモン・ロー・システムの展開を検討し、以下のような成果を得た。(1)未だ不明瞭なままである民法716条立法の起源をたどるため、同条文立法の参照判例を手がかりに、根拠と考えられる判例の調査を進めた。その結果、注文者の責任を規定した716条が立法される根拠となった英国における独立契約者概念について、それが形成されていく過程、特にマスター・アンド・サーヴァント関係をめぐる法理形成前史を明らかにすることができた。研究成果は、「英国における独立契約者(Independent Contractor)概念形成前史-民法716条立法の起源をたどって-」(鈴木ほか編著『法の流通』、慈学社、2009年所収)として公表した。(2)民法典編纂時において、穂積陳重がとりわけ716条に見られるイギリス法に由来する概念の導入を強調した理由を、英国における事情、特に法学教育の観点から明らかにするため、インズ・オブ・コートで収集した資料を検討した。この点については、引き続き、関連文書を調査収集中である。(3)代位責任法理の位置づけおよび発展について、19世紀後半の英国における裁判資料の検討を行った。その結果、同法理が、当初の家族法的枠組みから代理法的枠組みで捉えられはじめる過程を、法学文献と判例集の両面からほぼ再構成することができた。(4)英国法制史学会において、コモン・ロー・システム発展史の中での代位責任法理の展開について、多数の研究者から有益な助言を得た。
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Research Products
(1 results)