2009 Fiscal Year Annual Research Report
放電後混合型スリットノズルによる不安定分子の生成と高感度検出
Project/Area Number |
20850006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須磨 航介 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 助教 (10506728)
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Keywords | 高感度分光 / 放電後混合型ノズル / ラジカル / ラジカル錯体 |
Research Abstract |
本年度の研究によりパルス放電ノズル型CRDS分光器の立ち上げが完了した。CNラジカルの吸収スペクトルをモニターしつつ装置の最適化を行った。最終的に通常のラジカルのスペクトル観測には十分な感度を持つことを確かめた。さらに、本研究の目標の一つであったラジカル分子錯体のプロトタイプである希ガス錯体Ar-CNの検出を試みたが、現在のところ明確な検出には至っていない。この原因の一つとしてラジカルの生成量が未だ不十分であることが考えられる。幾つかの装置の改良により、現状の打開を試みている。その一つとして、最近放電スリットノズルを作成した。レーザー軸方向にのみ放電ガスが噴射されるよう、スリット、電極の構造に工夫を施した また、本装置による更なる挑戦的な観測対象を見出すため、装置開発、実験と並行して理論計算を行った。その中の一つであるHO3ラジカルの結果について概説する。HO3ラジカルは古くからその重要性が指摘されつつ、実験的な困難のため研究のあまりなされていなかった系である。2005年申請者が気相での検出に成功したことをきっかけに、幾つかのグループによる理論、実験による研究が活発に行われてきたが、それらの結果には矛盾が指摘されているなど厄介な系である。本研究で行った高精度のMRCI計算は既報の回転定数、振動数等の実験値を誤差1%程度で再現することができた。本計算によるHO3の結合解離エネルギーは1.14kcal/molとなり、実験から間接的に求められている値よりかなり小さい。実験との不一致の原因については必ずしも十分に解明できていないが、従来提案されていた大気中でのHO3の濃度は高く見積もられ過ぎていた可能性がある。さらに同じ高精度の計算手法を用いて励起状態の計算を行ったところ、強く結合した励起状態が存在することが分かり、本研究で開発した分光器による観測の準備を進めている。
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