2009 Fiscal Year Annual Research Report
口腔遺伝性疾患の分子遺伝学解析およびヒトエナメルマトリックス蛋白の臨床応用
Project/Area Number |
20890009
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
貴田 みゆき Hokkaido University, 大学院・医学研究科, 客員研究員 (80507442)
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Keywords | 遺伝性象牙質形成不全症 / 遺伝性多数歯欠損症 / 遺伝子解析 |
Research Abstract |
本年は国内で責任遺伝子変異同定の報告が無かった遺伝性象牙質形成不全症(DGI)家系を検出し、原因遺伝子変異の同定を試みた。DGIは遺伝的要因により乳歯・永久歯全ての歯の象牙質に形成障害が生じる状染色亭優性遺伝性疾患である。遺伝子解析の結果4番染色体上のDentin sialophosphoprotein(DSPP)エクソン3にGTT→GAT(Val^<18>→Asp)の変異を確認した。この変異は本家系内発症者のみに認め、正常人100名で確認されなかったため病因変異であると同定した。その結果を2009年European Journal of Oral Sciencesに報告した。本例は本邦初の報告となり、世界で25例目の報告となった。 さらに本年は、遺伝性を疑う多数歯欠損家系も検出し、病因遺伝子とその変異の同定を目的とした遺伝子解析を行った。永久歯欠損数は患児16本、患児弟19本、患児母16本であり審美的・機能的障害も懸念される。遺伝子解析の結果14番染色体上のPAX9遺伝子エクソン2に一塩基欠失を検出しし(c.601delC,A198fsX211)病因変異と判定した。本例も本邦初の報告であり、現在のところ世界で19例目となるため、その報告準備を進めている。 本年実施された研究は、本邦において非常に貴重な症例をターゲットとし、歯科遺伝学領域の開拓をする上で大きな功績を残すことができた。今後はこれらの成果をもとに、分子レベルでの歯の発生メカニズムの解明、歯科領域における遺伝性疾患の発症前診断をふまえた予防的治療を当面の課題とし、将来的には遺伝子治療・再生医療を含めた病態治療への応用を目標としている。
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