2008 Fiscal Year Annual Research Report
脂肪肝からの肝移植は可能となるか-虚血再還流障害から移植まで動物モデルを使って-
Project/Area Number |
20890105
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
岸和田 昌之 Mie University, 医学部附属病院, 助教 (40501961)
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Keywords | 虚血再還流障害 / 脂肪肝 / 類洞内皮障害 / TM / ラット / 肝移植 / 細胞単離 / 微小循環障害 |
Research Abstract |
【目的】肝切除時及び肝移植におけるグラフト肝では、一時的な血行遮断による肝類洞内微小血栓形成に起因する虚血再還流障害が認められる。本年度の研究では、肝虚血再還流モデルラットにみられる肝障害に対する組換えヒト可溶性トロンボモジュリン(rhsTM)の保護効果について検討した。 【方法】 雄性ラット肝左葉と中葉をクランプして70%肝虚血を行い、虚血90分後にクランプを開放して虚血再還流モデルラットを作成した。虚血30分後にrhsTM(3mg/kgBW)あるいはsalineを注入し、再還流後より、経時的に血漿、血清、肝組織を採取し、微小循環障害および炎症反応に対して評価を行った。 【結果】 血漿AST、ALT、ヒアルロン酸は、saline投与群に比較して、rhsTM投与群で有意に低下していた。また、病理染色では、コントロール群は類洞の拡張や肝実質細胞の傷害を認められていたが、rhsTM投与群は改善していた。微小循環障害を評価するため免疫染色にて類洞内フィブリンの沈着を評価すると有意に改善しており、血清中のFDP濃度の低下も、saline投与群に比較してrhsTM投与群で顕著に認められた。肝表面における血流をレーザードップラーにて評価するとrhsTM投与群にて再還流後2.5分より有意に血流の改善が認められ、これが観察期間の二時間にわたり有意差を認めた。微小循環障害が顕著に認められたが、抗炎症作用も評価したところ、虚血再還流2時間後の血漿IL-6とTNFα、及びKCでのIL-6、TNFαの産生も、虚血前に比較して両群で有意に増加したが、それらの値は、saline投与群に比較して、rhsTM投与群で有意に低値を示した。 【結論】 rhsTM投与は、類洞内微小血栓形成の抑制及び炎症性サイトカイン産生の低下を介して、虚血再還流障害から肝臓を保護することが明らかになった。
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