2008 Fiscal Year Annual Research Report
重度の急性呼吸器症状を呈する新型レオウイルスのコントロール法の確立に関する研究
Project/Area Number |
20890290
|
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
酒井 宏治 National Institute of Infectious Diseases, 動物管理室, 研究員 (70515535)
|
Keywords | ウイルス / 感染症 / 社会医学 / 獣医学 / 動物 |
Research Abstract |
高熱と急性の呼吸器症状を伴うインフルエンザ様症状を呈し入院した海外渡航者からウイルスが分離された。そのウイルスは、過去3例のみ論文報告のある極めて稀なオルソレオウイルスのネルソンベイウイルスに属する新型レオウイルスであった。本研究では、その分離株の性状解析を実施すると共に、インフルエンザやSARSとの類症鑑別を視野にいれたウイルス遺伝子検出系および血清学的診断系の開発、動物感染実験を行い、新興感染症としての新型レオウイルスのコントロール法の確立を試みた。1.分離株の塩基配列決定:分離株のS1、S2、S3、S4セグメントの全塩基配列決定を行った。特に、同時期に分離されたKamparウイルス、HK23629/07株と非常に近縁であることがわかった。2.ウイルス遺伝子検出系の開発:Sセグメントの配列情報から、(1)保存性が高く、(2)哺乳類レオウイルス及び鳥類レオウイルスに反応せず、(3)ネルソンベイウイルス群特異的なプライマーセットを作製し、RT-PCRでの迅速かつ高感度な遺伝子検出システムを構築した。現在、動物感染実験で得られた臓器を用いて、その有用性を検討中である。3.血清学的診断系の確立:(1)ウイルス中和試験、(2)間接蛍光抗体法、(3)不活化濃縮精製ウイルスを抗原としたELISAのシステムを確立した。現在、動物感染実験で得られた感染血清を用いて、ELISA法での有用性を検討中である。4.マウス感染実験:分離株のマウスでの病原性の有無を明らかにするために、感染実験を行った。感染後、体重の顕著な減少と肺の肝変化を伴う呼吸器症状が認められた。感染臓器からのウイルス分離では、呼吸器系ならびに消化器系においてウイルスが分離された。ネルソンベイウイルス群の動物感染実験報告はこれまでになく、本分離株がマウスにおいて実験的に急性呼吸器症状を示すことを明らかにした。
|