2021 Fiscal Year Annual Research Report
出土金属製文化財の保存処理に使用された樹脂の寿命予測について
Project/Area Number |
20H00038
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Research Institution | Gangoji Institute for Research of Cultural Property |
Principal Investigator |
植田 直見 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (10193806)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 繁生 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (00752370)
川本 耕三 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (10241267)
塚本 敏夫 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, センター長 (30241269)
山田 卓司 龍谷大学, 文学部, 講師 (30435903)
渡辺 智恵美 別府大学, 文学部, 教授 (40175104)
田中 由理 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (70611614)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 出土金属製品 / 含浸樹脂 / 劣化 / 有機溶剤 / 寿命予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
保存処理後の出土金属製品の状態調査は、山口県山陽小野田市、愛媛県松山市、京都府京都市、三重県四日市市の教育委員会や資料館で実施した。分析を実施する資料は保存処理から少なくとも10年以上経過したものを中心に選び出した。 含浸樹脂は、赤外分光分析(FT-IR)、熱分析(DSC)、熱分解-ガスクロマトグラフ/質量分析(Pyro-GC/MS)、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)、発生ガス濃縮-加熱脱着-ガスクロマトグラフ質量分析(以下MSTD-ATD-GC/MS)などの分析を実施した。その結果、赤外分光分析ではいずれの試料も大きな変化は認められなかった。GPCやPyro-GC/MSでは分子量の変化や、微量の分解物の存在が確認できたが、これらが樹脂の機能にどのように影響を及ぼしているかまでは、現時点では解明できなかった。さらにDSCでガラス転移点の測定を行った結果、未使用の樹脂では、含有する溶媒の種類によってガラス転移点が変化することが分かった。しかし、資料から抽出した樹脂では、ガラス転移点の有意の変化は認められなかった。これは溶剤抽出により、資料にもともと含まれている含浸溶剤の影響が認められなくなったためであると考えられた。ガラス転移点の変化は樹脂の機能性に影響する可能性が考えられる。一方、微量の残存溶剤を分析する目的で行った発生ガス濃縮-加熱脱着-ガスクロマトグラフ質量分析(以下MSTD-ATD-GC/MS)では内部に残っている溶剤が確認できた。 さらにNAD10に替わる樹脂については、現在文化財の保存処理に使用されている樹脂も含め、塗膜の厚みや表面状態、水蒸気の透過性などを調べた結果、樹脂と溶剤の違いにより異なった結果が認められることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
保存処理後の出土金属製品の状態調査は、昨年度ほとんど実施できなかったが、今年度は中国・四国・近畿地方を中心に実施できた。しかし、調査の大半が年度後半の実施となったため、当初予定していたよりは件数は減少した。 また、調査日程が後半にずれ込んだため、資料から抽出した樹脂の分析も当初の予定よりは遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
保存処理後の出土金属製品の劣化状態の調査をさらに進める。特に日本でアクリル樹脂による保存処理が開始された1970年代の資料を調査し、約50年の経過による資料の変化と含浸樹脂の変化の原因について、化学分析を通して解明する。さらに多くの含浸樹脂や劣化促進実験後の樹脂などを分析することにより、樹脂の分子構造の変化と機能の低下との関係を探る。 加えて、含浸樹脂の劣化とはどのような状態のことを指すのか、また樹脂の寿命についても、分子構造だけでなく機能性からも検討を進める。
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Research Products
(1 results)