2021 Fiscal Year Annual Research Report
行政契約と行政計画を主軸とした当事者自治的公法秩序に関する比較法的研究
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20H00055
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
亘理 格 中央大学, 法学部, 教授 (30125695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大貫 裕之 中央大学, 法務研究科, 教授 (10169021)
徳本 広孝 中央大学, 法学部, 教授 (20308076)
岸本 太樹 北海道大学, 法学研究科, 教授 (90326455)
野田 崇 関西学院大学, 法学部, 教授 (00351437)
北見 宏介 名城大学, 法学部, 准教授 (10455595)
洞澤 秀雄 南山大学, 法務研究科, 教授 (60382462)
小澤 久仁男 日本大学, 法学部, 教授 (30584312)
津田 智成 北海道大学, 法学研究科, 准教授 (00779598)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 当事者自治的公法秩序 / 行政計画 / 都市計画 / 合意手法 / 協定 / 小公共 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、当事者自治的公法秩序の具体的制度設計の調査検討、及び行政法学における位置づけ方に関する理論研究を並行して進めた。そのために5名の専門家による講演と質疑応答、及び久保茂樹『都市計画と行政訴訟』を素材に仏独都市計画法制度の比較法的検討を内容とする研究会を開催した。その結果、以下の点が明らかになった。 第1に、都市計画法の構造について、法律を「枠組み法」と捉える一方、具体的規制内容は市町村の裁量的な土地利用詳細計画策定に委ねるべきであり、またその内容は、都市施設整備や事業実施を目的とした「作る」ための制度から脱却し、既存の都市を適切に「管理」し「運営」するための制度への転換を図るべきであることが明らかになった。因みに独仏の都市計画には異なる面も大きいが、法律自体は枠組みを示すのみで具体的規制は市町村の実情に応じた多様性を認めるという共通性を有しており、この点で示唆的であることも明らかになった。 第2に土地利用詳細計画の内容面では、上述の「管理」型都市計画への転換のために、特に「小公共」を対象にコミュニティ次元の都市計画を充実させる必要があり、協定等の合意手法を主にした仕組みが適合的であることが明らかになった。この点でBIDやアメリカのカヴェナントの制度と運用実態について、調査検討の必要性が明らかになった。 第3に、以上のような新たな都市計画制度の担い手について、上述のBIDやカヴェナント等に顕著なごとく、私人と行政間又は私的法主体間の協定・合意の当事者や私的組織体が、公共的任務遂行を担う場面を想定すべきであり、その視点を加えた行政法理論の再構築が不可欠であり、これら外国法制度の仕組みと運用実態の検討が不可欠であることも、明らかになった。 以上の研究成果を通して、総じて、行政契約と行政計画という2つの手法間の関係を理論的に整理する必要があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染状況のため海外での調査を必要とする外国法制度の実態調査は進んでいないが、他方で、仏独英米各国法における行政契約法論と行政計画法論の文献調査を徹底すると同時に、これら外国法制度に造詣の深い国内研究者による講演及び質疑応答等を通じて、既存の比較法的知見を体系的に吸収し整理するための調査研究は進んでいる。 他方、当事者自治的公法秩序の具体的制度設計に関する検討と行政法体系におけるその位置づけ方を明確化するための理論研究は、上述の講演会やオンラインでの研究会や打ち合わせ会合を通じて今日まで平行して進めてきており、その結果、理論研究面では当初予定した以上に進捗する状況となっている。つまり、具体的制度設計の検討面では、外国法制度の実態調査が遅れ気味である反面、既存の研究成果を活用することによる理論研究は、予想以上に進んでいる。 以上の結果、総じて本研究計画はおおむね順調に進展していると言うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
以下に述べる未解明問題を解明するために、今年度に引き続いて、専門の国内研究者の講演及び質疑応答を主とした研究会の開催を通じた調査研究を進める。 第1に、比較法的視点から当事者自治的公法秩序の研究を進める際の留意点として、私人間協定や地域限定の当事者自治的仕組みを一般的に採用する英米法的伝統と、これをあくまでも例外的制度として部分的に採用するに止まるヨーロバ大陸法的伝統との対置を意識する必要がある。 第2に、このうち大陸法的伝統との関係では、BIDを部分的に採用しているドイツにおいて法治国原理や民主性原理との衝突がどのように論じられているか、またBIDを今日まで採用していないフランスにおいては、かかる私法的制度の不採用に支障はないのか、また当該不採用部分を何によって補っているか、という視点から深掘り的検討が必要となる。 第3に、当事者自治的公法秩序に関する基礎理論的研究については、公私協働自体も行政主導と私人主導のどちらから出発するかにより多様であることを踏まえた検討が必要であり、また、本研究計画における行政契約と行政計画という2つの主題間の相互関係についても、より明確化するための理論的検討が必要である。
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Research Products
(10 results)