2020 Fiscal Year Annual Research Report
Real Estate Market and Macro Economy
Project/Area Number |
20H00082
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
清水 千弘 日本大学, スポーツ科学部, 教授 (50406667)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植杉 威一郎 一橋大学, 経済研究所, 教授 (40371182)
阿部 修人 一橋大学, 経済研究所, 教授 (30323893)
井上 智夫 成蹊大学, 経済学部, 教授 (70307114)
宮川 大介 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (00734667)
北村 周平 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (90812090)
秋山 祐樹 東京都市大学, 建築都市デザイン学部, 准教授 (60600054)
鈴木 雅智 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 特任助教 (70847095)
馬塲 弘樹 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 特定助教 (60869121)
才田 友美 大阪大学, 国際公共政策研究科, 助教 (30882419)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 不動産価格 / 人口減少・高齢化 / 空き家・所有者不明土地 / 国際パネルデータ分析 / ヘドニックアプローチ / 空間計量経済分析 / 都市集積 / 国際資本移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ミクロレベルのデータを大規模に用い、1)不動産利用の効率性を検証し、不動産市場が家計・企業に及ぼす影響を構造推定やネットワーク分析の手法を用いて明らかにする、2) 不動産市場における価格形成要因について従来考慮されてこなかった視点も付加し多角的な理解を提供する、といった二つの大きな問いに答えることを目的としている。具体的には、人口減少・高齢化、国際的な資金移動、金融政策や税制などのマクロ要因に至るまで、不動産市場と実体経済との相互関係の包括的な解明を行うために研究プロジェクトを進めている。2020年度は、まず17か国の約半世紀の国際パネルデータを整備し、人口動態の変化と不動産価格のダイナミクスのマクロ変動の解明を、理論・計量的に進めるところからスタートした。人口減少と高齢化の進展は、全国的な空き家の増加や所有者不明土地の増加など、社会問題として広く認識されるようになってきている。市場が効率的に機能すれば、空き家などの余剰が発生すればそれを解消するように市場が作用し、長期的には均衡状態へと導かれるはずである。しかし、このような問題が発生していることを考えれば、何らかの歪みが生じていることになる。ここでは、政府が公表する人口予測に誤差が存在していることから誤った供給計画が設定され過剰資本を抱えたこと、その解消コストが高いことに注目し、金融政策との関係をも加味したモデルを開発することで、問題の一般化を図った。さらに、不動市場分析の中核をなす「価格」においても、その形成メカニズムには、時間的な依存性と合わせて、財としての異質性への配慮と空間的な差別化を考慮したモデルが求められる。そこで、空間的な異質性を加味した土地と建物の異質性を考慮したモデル開発や時間的な依存性をも考慮できるモデル開発を行った。このような成果を受けて、研究主題へと発展させる基礎が確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究の推進にあたり、まず必要なデータ資源の正確な理解、分析手法の開発を行った。データ資源については、日本不動産学会誌第131号、土地総合研究第28号において、研究代表者が編集責任者となり、研究分担者が参加し、研究を進めるために必要な不動産関連の「データ資源」についての網羅的な整理を行った。加えて、不動産市場を分析するための手法を、近年において進化が大きい機械学習をも含む形で整理し、本プロジェクトの参加者の多くが参加し、2冊の本を出版した。また、学術的な研究成果として、2020年度に査読雑誌に掲載または掲載予定の論文は併せて14本である。5本の研究論文は投稿中である。その他、公開した学術論文等は9本となる。さらに、研究期間を通じて研究に必要なデータ資源の整備を積極的に進めた。①バブル崩壊期にあたる1991年以降の東京都の約140万の建物の利用変化がわかる空間情報を整備するとともに、新宿区に限定して、土地の細分化状況がわかる電子地図データの整備と、不動産の取引や権利の変化が補足できる登記簿データの整備を進めた。また、不動産登記簿データについては、全国を対象として2005年から2020年までの小地域レベルでの不動産取引の流通量を、登記原因別に集計した指標作成にも成功した。②国際的な不動産取引のマイクロデータを持つ、米国NYに本社を持つReal Capital Analysis社と契約をし、50か国に及ぶ国の主要都市での不動産の取引価格と属性がわかるデータの整備を行った。③民間信用会社が持つ企業のマイクロデータと地図基盤、オフィスビルに関するデータおよびオフィス家賃に関するデータを結合するためのデータ整備を進めた。これらの一連のデータに関する知識の整理と実際のデータ整備を通じて、本研究課題を推進するための基礎的な知識やデータインフラの整備が整ったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
日本をはじめとする縮退が見込まれる国において、都心部の大規模な再開発が行われ集積が強まっているメカニズムは、明らかではない。そこで、再開発が進む特定地域の不動産市場に注目し、土地取引情報、人口動態、地籍調査の進捗状況などを用いて、都市集積の決定要因と不動産利用の効率性について分析する。具体的には、整備されたバブル崩壊前後を含む登記移転情報、土地・建物の利用状況)、不動産取引価格情報、土地利用規制情報、民間信用調査会社の企業データを接合した上で、バブル期から現在に至る長期において、土地利用規制が不動産の取引頻度や価格にどのように影響したか、地域の土地利用や土地所有がどのように変化したか、再開発によりどのように集積が変化したのか、結果として不動産利用の効率性は改善したのかを明らかにする。さらには、不動産市場は売り手と買い手の間の情報の非対称性が大きいことから、不動産市場が効率的に作用するためには、不動産仲介会社などのエージェント機能が必要とされる。そこで、全国の2005-2020までの小地域レベルでの不動産会社の集積または参入・退出との関係を明らかにする。一方、不動産の爆買いと揶揄されるように、東京をも含む世界の大都市では、不動産価格が高騰している。そのような中では、人口減少・高齢化に直面し資産価格が下落する予想がたてられても、供給調整が働いたり、海外からの資金が流入したりすることで資産価格の暴落は起こらないといった議論がある。このようなメカニズムを解明するために、50カ国超の主要都市における、RCA社の売り手・買い手の属性(国籍・企業の種別)をも含む個別の不動産取引に関するミクロデータを用いて、集計レベルデータを用いた既存研究では十分に分析できなかった、国際間の資金移動を考慮した不動産価格決定のメカニズムを描写することができるモデルを開発する。
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Research Products
(31 results)