2021 Fiscal Year Annual Research Report
Common processes between imitation and empathy: how reward system reinforces mirror neuron system?
Project/Area Number |
20H00105
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡ノ谷 一夫 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30211121)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池渕 万季 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (20398994)
橘 亮輔 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (50610929)
柳原 真 帝京大学, 先端総合研究機構, 講師 (60392156)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 模倣学習 / 共感 / ミラーニューロン / 報酬系 / 情動系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、模倣と共感の原始的モデルとして小鳥の歌学習とラットの情動伝染に共通する神経機構を探る試みを続けている。 小鳥が歌を学ぶ過程では、他個体から聴き憶えた歌の記憶に基づいて自己の発声を修正する必要がある。この音声模倣学習に重要な機能を持つ可能性があるミラーニューロンとドパミン神経の関わりについて、電気生理学的手法を用いて検討を進めた。自由に行動しているジュウシマツの大脳基底核Area Xから神経活動を計測した結果、歌を発声する時と覚醒下で自己の歌を聴く時に同じ神経活動を示す聴覚発声ミラーニューロンを見出した。これらのニューロンは発火様式から中型有棘細胞と推定された。他方、淡蒼球内節の細胞と推定される一群のニューロンも聴覚発声ミラーニューロンの性質を示したが、その聴覚応答は覚醒状態に依存することが分かった。この淡蒼球内節型細胞は睡眠中に自己の歌に対して聴覚応答を示したが、覚醒下では聴覚応答を示さなかった。以上より、中脳ドパミン神経から密な投射を受けるArea Xに聴覚発声ミラーニューロンが存在することを明らかにした。これはArea Xにおける聴覚発声ミラーニューロンが聴覚情報と発声運動情報を結びつけることで音声模倣学習を支える機能をもつことを示唆する。 ラットの情動伝染については、生育環境の貧富に応じて情動発声への応答性を調べる研究を行った。生育環境の違いは、情動発声への心拍変動と関係しなかったが、富環境で生育した個体のほうが快情動の発声への接近頻度が長い傾向があった。また、ラットの個体数に応じた餌場独占傾向を計測した結果、5個体であると独占傾向が生じるが、3個体ではそのような傾向は生じなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小鳥の大脳基底核Area Xから神経活動を計測することで、聴覚発声ミラーニューロンを新たに見出した。また、Area Xのミラーニューロンがドパミン細胞から密な神経投射を受けることも遺伝子発現の時間差を用いた解剖学的解析から明らかにしつつある。ラットの共感性を左右するパラメータとして生育環境が影響している可能性を検出した。 以上より、本研究は当初の計画通り順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
小鳥を対象とした研究では、引き続き電気生理学的手法と解剖学的手法により、Area Xにおける聴覚発声ミラーニューロンの性質の解明を進める。Area Xには中型有棘細胞や淡蒼球型の細胞以外にも異なる細胞集団が存在することから、これらの細胞もミラーニューロンの性質を示すか否かを検討する。さらに、発達段階のどの時期にArea Xの細胞がミラーニューロンの性質を示すようになるのかを明らかにすることでミラーニューロンが音声模倣学習に果たす機能を探る。これらと並行して、ファイバー光計測を用いた神経活動計測の立ち上げや中脳ドパミン細胞とArea Xのミラーニューロンとの解剖学的接続について定量的解析を進める。 ラットを対象とした研究では、生育環境の差異によって報酬系の解剖学的構築が異なるかどうか、組織化学的な研究を計画している。また、情動発声よって変動する脳内ドパミン系の直接計測を試みている。
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