2021 Fiscal Year Annual Research Report
Determination of the charge radius of antiproton and test of CPT symmetry through the Lamb shift measurement of antihydrogen
Project/Area Number |
20H00150
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒田 直史 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (10391947)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 反水素原子 / 反陽子ビーム / 荷電交換反応 / マイクロ波分光 / ラムシフト |
Outline of Annual Research Achievements |
CERNのELENAからの反陽子ビーム提供が2021年8月末より始まり、渡航が通常より困難であったが夏から秋口に現地に滞在することができ、ラムシフト分光の対象となる反原子ビームを得るための反水素原子合成実験を初めて行った。この合成実験は、これまで他の実験グループによって行われた反水素合成とは違って、6keVの反陽子ビームをポジトロニウムにぶつけることで、ポジトロニウムのうちの電子と反陽子の交換によって反陽子と陽電子が束縛した反水素を得るものである。より低エネルギーでの同様の反応は、他の実験でも試みらているが、本研究では、2S状態が十分な比率で得られ、かつ将来の重力加速度測定実験で求められている反水素イオン生成チャンネルを持つ特異なエネルギー領域である6keVでの衝突による反水素原子合成を目指した。十分な強度の陽電子や安定した反陽子ビームは2021年中には得られなかったが、幾つかの反水素合成のデモンストレーションは行え、幾つもの装置が協調して動作することが確認できた。 ラムシフト分光用のマイクロ波装置は、想定されるスペクトルが広い周波数にわたるため、その広い周波数域での周波数特性が一様になるような伝送線路として設計した。ただし、高精度分光の段階では、4つある超微細準位それぞれの寄与によって複数のピークをもつスペクトルとなり測定精度が悪化してしまう。実際、共同研究者らの行なった水素原子線での試行実験では広いスペクトルが得られた。そのため、予め特定の超微細準位のみを残すことで、測定精度を確保する方法を探った。改良した装置は特定の周波数に対して良好なQ値を得られるもので、ネットワークアナライザを用いたマイクロ波の応答測定を行い、設計通りの応答があることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CERNのELENAからの反陽子ビーム提供が2021年8月末より始まり、夏から秋口にラムシフト分光の対象を得るため、最初の反水素原子ビーム生成実験を行った。陽電子をシリカ標的に照射してポジトロニウムを生成し、そのポジトロニウム標的に反陽子ビームを交叉させることで荷電交換反応によって反水素原子が生成され、ビームとして標的より出てくることを期待した。陽電子強度は想定より二桁近く弱く、また提供された反陽子ビームは、ビーム強度は想定と変わらなかったが、毎回ビーム位置がずれることが観測された。これはポジトロニウム標的との重なりが毎回変わることを意味した。また、減速器では放電が起って十分な電圧を印加できなかったため、予定していた6keVではなく20keVでの衝突となるなど、十全な条件を得られなかったが、反水素原子ビームを得るための装置が加速器と協調動作することが確認でき、比較的ビームの安定していた条件について解析を行い、反水素原子の候補を探索した。 ビームタイム後の2021年から2022年の冬に水素原子ビームでのマイクロ波分光装置のテストを想定していたが、オミクロン株の急速な拡大で渡航ができなくなったため、延期した。また、現地でのテストがしばしば行えなくなることから、水素原子ビーム生成用のチャンバーと原子線導入装置を整備した。2022年の春から夏には、反水素原子の2S状態の超微細準位の特定のものを選ぶためにそれまでに開発した伝送線路型マイクロ波照射部を特定の周波数に対して良好なQ値を得られるものに改良した。その改良型の超微細構造選別装置のマイクロ波による応答試験を行った。アナライザを用いたマイクロ波の応答測定から、設計通りの応答があることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロ波分光装置は、超微細構造選択部とマイクロ波掃引部の二段の設計と開発が済み、これを用いた水素原子での測定を行う予定である。 反水素合成は、陽電子ビームの強度および反陽子ビームの質の両面での改善を待つとともに、合成実験に参加して、データの取得と解析を進め、反水素原子ビーム生成の確認、ライマンα光観測による2S状態反水素原子の生成確認、マイクロ波照射によるラムシフト遷移の確認、という順で進めていく予定である。
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Research Products
(4 results)