2021 Fiscal Year Annual Research Report
位相制御したテラヘルツバルスによるレアイベント表面プロセスの駆動
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20H00343
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉信 淳 東京大学, 物性研究所, 教授 (50202403)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 隆佑 東京大学, 物性研究所, 准教授 (50615309)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 表面 / 反応 / 分子振動 / 反応速度論 / テラヘルツ |
Outline of Annual Research Achievements |
物性研究所極限コヒーレント光科学研究センター内の実験室に、新たに再生増幅器及び白色光を共有するツイン型光パラメトリック増幅器(OPA)を導入した。二色レーザー誘起エアプラズマによるテラヘルツ放射によって数テラヘルツから中赤外にわたる超広帯域の高強度パルスを生成する光源システムを構築した。このテラヘルツパルスは非対称なサブモノサイクル的形状をしており、電場ベクトルの向きを反転させることが可能である。近赤外フェムト秒パルス(800nm)を固体表面に吸着した分子に照射することにより誘起される光脱離を四重極質量分析計で計測するシステムを構築した。Pt表面における吸着系の光脱離については先行研究が報告されており、我々が構築した計測システムで光脱離が観測できることを検証した。次に、超広帯域テラヘルツパルスをPt(111)表面におけるいくつかの吸着系に対して照射し、テラヘルツパルスが誘起する光脱離の観測を試みた。さらに、近赤外フェムト秒パルスと超広帯域テラヘルツパルスを同期させて吸着系に照射する実験に着手した。また、白色光を共有するツインOPAのシグナル光どうしで差周波発生を行うことで、位相が固定された狭帯域の高強度パルス生成システムの構築に着手し、発生を確かめた。一方、テラヘルツパルス光源を駆使して、10-45THz(波長6-30μm)の超広帯域にわたって30fsの時間分解で複素応答関数を精密に決定することのできる時間分解計測システムを構築し、固体における格子振動直接励起による音響フォノン生成や、相対論的(ディラック)電子が示す光励起キャリアダイナミクスといった固体超高速分光への展開も進めた。これらの実験と並行して、既設の表面分析装置を用いて、対象とするモデル触媒表面における吸着系および表面反応の研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年後期に再生増幅器及び白色光を共有するツイン型光パラメトリック増幅器(OPA)を導入し、二色レーザー誘起エアプラズマによるテラヘルツ放射によって数テラヘルツから中赤外にわたる超広帯域の高強度パルスを生成する光源システムの構築を行うことができた。また、白色光を共有するツインOPAのシグナル光どうしで差周波発生を行うことで、位相が固定された狭帯域の高強度パルス生成システムの構築に着手し、狭帯域テラヘルツパルスの発生を確認した。表面化学反応のうち脱離現象を四重極質量分析計で観測するシステムを立ち上げ、Pt(111)表面に吸着した二原子分子の近赤外フェムト秒パルスによる光脱離を観測することができた。並行して、既設の表面分光装置によりCuモデル触媒表面におけるフォルメート種の水素化および二酸化炭素の水素化について実験を行い、熱反応による新たな表面プロセスのデータを収集し、テラヘルツパルスにより駆動する表面反応の候補を蓄積した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に、超広帯域の高強度テラヘルツパルスおよび位相が固定された狭帯域の高強度パルスを生成システムを構築することができた。令和4年度は、これら二種のテラヘルツパルスの特徴を活かした表面反応プロセスの駆動実験を進める。特に、熱的表面反応が進行する以下の温度領域で、電場ベクトルの規定された超広帯域テラヘルツパルスあるいは位相が固定された狭帯域テラヘルツパルスを吸着系に照射することにより、吸着分子の脱離反応、分解反応、合成反応の駆動を試みる。これらの結果に基づき、表面吸着系のポテンシャルエネルギー面の中で鍵を握る反応座標と運動を解明し、レアイベントである表面プロセスの制御や駆動につながる知見を得たい。
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