2021 Fiscal Year Annual Research Report
Targetting of cancer-specific metabolic system for senolytic therapy
Project/Area Number |
20H00443
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
稲波 修 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (10193559)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平岡 和佳子 明治大学, 理工学部, 専任教授 (00212168)
安井 博宣 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (10570228)
平田 拓 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (60250958)
滝口 満喜 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (70261336)
岡松 優子 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (90527178)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 老化様細胞死 / がん / SASP / 放射線治療 / 化学療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はインビトロの培養細胞の系の実験で、以下の四つの結果が明らかとなった。 1)グルタミン要求性の強いヒト肺がんA549細胞やH460細胞では、放射線照射により、これらの細胞でのグルタミンの取り込みの増大とグルタメートの増大、すなわちグルタミナーゼの活性化を起こす事を明らかにした。さらに、グルタミン代謝阻害剤添加あるいはグルタミン欠乏培地下で培養すると治療線量レベルの放射線照射によって多くの老化様細胞死とSASPの培養液中への分泌を増強させることが可能である事が明らかとなった。 2)グルタミノリシス阻害条件下で放射線による老化様細胞死の誘発機構には活性酸素種の生成量、グルタチオン量の変化DNA損傷の量、さらにはDNA損傷に伴う伴うp53やp21、p16の発現変化などの既知のメカニズムの関与は殆ど無く、未知の機構の関与が示唆されている。 3)更にグルタミノリシス阻害条件下で放射線誘発する老化様細胞死を起こす条件で、Bcl-XL阻害剤ABT-737によって、この増大した老化様細胞死の多くはアポトーシスに変換できること、いわゆるセノリシスを起こせることを明らかにした。 4)一方では、同じ肺がん由来細胞でも786-o細胞ではグルタミン代謝阻害が老化様細胞の増強を起こさず、A549やH460細胞と同様の現象は観察されず、全ての肺がん細胞に於いて同様の機構が働いていない事も明らかとなった。また、脂質代謝阻害剤は老化様細胞増強には関与しなかった。 以上の結果はグルタミン要求性の強い肺がん細胞を中心にその亜致死レベルのグルタミノリシス阻害条件下で治療線量レベルの放射線照射をすると、多量の老化様細胞死の増大が起こす事を示しており、さらに、アポトーシス抑制因子の阻害剤で効率よく老化様細胞死をアポトーシスに変換できることが明確になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グルタミン要求性の強い肺がん細胞を中心にその亜致死レベルのグルタミノリシス阻害条件下で放射線によって多量の老化様細胞死の増大が起こす事が明らかとなり、さらに、アポトーシス抑制因子の阻害剤で効率よく老化様細胞死をアポトーシスに変換できることを明らかにした。この結果は今まで研究報告が全くなく、今後、過度炎症を引き起こさない治療法の開発において重要な発見である。この内容は既にTranslational Research誌に公表済みである。現在、分子的基盤をあきらかにする目的でグルタミン要求性のあまり強くない培養細胞やグルタミン代謝と密接に関連すると言われているRas変異について、老化様細胞死との関連性をあきらかにする研究を進めている。インビトロでの実験での進捗は予想通りの進み方であり、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの年間の結果を踏まえ、グルタミノリシスと老化様細胞死誘導の関連性とメカニズムをあきらかにする目的で以下の研究を進める。 1)他の代謝の異なるがん細胞でのスクリーニングを行い、応用範囲を広げると同時に、エトポシドなどの制がん剤での効果も評価を行う。 2)さらに、どういったがん細胞の代謝表現型が放射線や制がん剤と代謝阻害剤との組み合わせで老化様細胞死の増大を起こすのか明らかにする目的で、がん組織に於いてグルタミノリシス調節に強く関与すると言われているRAS変異に着目して、活性化RAS阻害剤やRNA干渉によるノックダウン細胞、活性化RAS発現系細胞を作成するなどして、グルタミノリシス阻害時の放射線や制がん剤による老化様細胞死増強への関与を明確にすることを試みる。 3)また、増加した老化様細胞をセノリシス誘導を起こせる薬剤として現在、Bcl-XL阻害剤ABT-737のみを用いているが、より効率の良い薬剤をスクリーニングする目的でアポトーシス抑制機能をもつ分子に着目してサバイビン(IAPファミリー)阻害剤、Bcl-2阻害剤、Mcl-1阻害剤やmTOR阻害剤等についても検討を進める。 来年度は次の応用研究へ向けて株化細胞を用いた細胞系の実験を精力的に進める。この様な効率よくアポトーシスを起こせる治療法はSASPによる過度の炎症応答を起こさない細胞死の表現型を操作する新しい治療法開発の基礎研究となる。
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Research Products
(26 results)