2021 Fiscal Year Annual Research Report
Channel regulating mechanisms of lipid bilayers via chemical-physical transduction
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20H00497
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
老木 成稔 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 特命教授 (10185176)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 貴浩 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 准教授 (40353437)
岩本 真幸 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (40452122)
松森 信明 九州大学, 理学研究院, 教授 (50314357)
許 岩 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90593898)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脂質2重膜 / イオンチャネル / 膜張力 / 接触バブル2重膜法 / コレステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
脂質2重膜はチャネルにどのように働きかけてその機能を制御しているのか。これが本研究の問いである。脂質2重膜はチャネルなどを載せる単なる受動的な容器ではなく、もっと能動的にチャネルに働きかけていることが分かってきた。この機構を解明することが本研究の目的であり、このことにより生体膜の複雑な機能の理解が深まる。脂質2重膜の内部では膜張力や膜内電場などの物理特性が変化し、チャネルに働きかけている。そしてそれらの物理特性は、脂質組成の変動や膜に溶け込む小分子(リガンドや薬物)によっても変化することが明らかになってきた。すなわち脂質2重膜は、リガンドや薬物が膜に入り込み化学組成変化が起これば、内部の物理特性を変化させ(化学-物理変換)、それをチャネルに作用させる、一種の「化学-物理変換体」である。この機構を解明するために生体膜を解体し、脂質2重膜にチャネルを組み込んだ系(再構成チャネル膜)で実験を行うことが本研究の戦略である。研究代表者らが世界に先駆けて開発した再構成チャネル膜法によって様々な実験が可能になり、「脂質2重膜の化学-物理変換という普遍的な機構とチャネルへの作用」を解明する。特に膜張力は様々な生理的環境の中で変化し、その変化が直接チャネルに作用するので、膜張力をダイナミックに測定することが不可欠である。これにより従来、静的・半定量的であった実験の精度を上げ、より詳細なチャネル-膜相互作用について検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膜物理測定のために接触バブル2重膜法を様々な工夫を行った結果、方法論としてほぼ完成の域に達しつつある。膜張力は広い範囲で変化させることができるようになった。そして張力の高速測定を前提として、膜電位に対する過渡的応答を詳細に検討しつつある。この結果、従来見落とされていた膜現象を捉えることに成功した。現在、詳細な解析を進めている。 チャネルに関しては従来のKcsAカリウムチャネルだけでなく、アクアポリン・TMEM16Fを含めた数種類のチャネルの実験と解析を進め結果が出始めている。従来の脂質平面膜法にくらべチャネル再構成という点だけから見ても格段に効率を上げることができたので様々な実験が可能になった。それぞれのチャネルで見つかる新しい現象に対応する適切な解析を行いつつある。 一方、チャネル形成毒素は膜挿入が最も簡単なチャネルである。これについて膜挿入過程を分子動力学シミュレーションによって再現し、そのクリティカルなステップを解明することに成功した(Kalathingal et al. 2021)。
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Strategy for Future Research Activity |
接触バブル2重膜法は電気的・力学的測定のために実験法としてほぼ確立し、様々なチャネルと膜自体に対する実験を効率よく進めている。しかしこのようにして得られた実験結果をどう解析するかについての方法は前例がなく、全く確立していない。純粋な力学的張力負荷だけでなく電圧負荷による張力変化などの実験結果を解析するために、膜変形エネルギーを基にした物理モデルを試行錯誤しながら今後適用していく必要がある。この問題は膜の厚さに対するチャネル応答においてもきわめて重要であり、解析法の確立を目指したい。
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Research Products
(3 results)