2021 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経病原性ウイルスの新たな神経細胞伝播機構の解明
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20H00507
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
柳 雄介 長崎大学, 感染症共同研究拠点, 教授 (40182365)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白銀 勇太 九州大学, 医学研究院, 助教 (40756988)
橋口 隆生 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (50632098)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 麻疹ウイルス / 亜急性硬化性全脳炎 / 神経 / 膜融合 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々のこれまでの研究で、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)における麻疹ウイルスの神経細胞伝播には、ウイルスのF蛋白質の変異による膜融合能の亢進が重要な役割をしていること、そのような変異F蛋白質の構造変化の誘導とそれによって起こる膜融合には、既知の麻疹ウイルス受容体であるSLAMF1とnectin 4以外の分子が関与していることが分かっていた。我々は、その分子が、シナプスに高発現している細胞接着分子であるCADM1とCADM2であることを今回明らかにした。一般の受容体がウイルスのH蛋白質とtransに(異なる細胞上で)相互作用することにより、F蛋白質の構造変化を誘導するのに対し、CADM1とCADM2はウイルスのH蛋白質やF蛋白質と同一の細胞上でcisに働くことによりF蛋白質の構造変化を誘導した。CADM1とCADM2をノックダウンすると、膜融合能が亢進したF蛋白質による膜融合が減弱し、そのような変異F蛋白質を持つ麻疹ウイルスの神経細胞間伝播が低下した。CADM1とCADM2には、選択的スプライシングにより、ストーク(stalk)領域の長さが異なる様々なタイプが存在するが、短いストーク領域を持つタイプのみが変異F蛋白質による膜融合を誘導することができた。一方、H蛋白質の細胞外領域はヘッド(head)とストークから構成されており、ヘッドでSLAMF1やnectin 4と相互作用している。しかし、ヘッドを欠くH蛋白質でも変異F蛋白質による膜融合を誘導したことから、ヘッドではなくストークでCADM1やCADM2と相互作用していることが明らかになった。今後、H蛋白質ストークがCADM1あるいはCADM2とどのようにcisの相互作用をすることにより変異F蛋白質の構造変化を誘導して膜融合を起こすかを明らかにする必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた実験計画をほぼ実施することができ、神経における麻疹ウイルス伝播機構の解明や、阻害剤の開発につながる重要な知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.CADM1、CADM2の変異体やキメラ分子を作成することにより、分子のどの領域がH蛋白質との相互作用や膜融合の誘導に関わっているかを明らかにする。また、H蛋白質のストーク領域のどこがCADM1、CADM2との相互作用に関わっているかを明らかにする。 2.麻疹ウイルスの動物神経感染モデルとして用いられているマウス、ハムスターのCADM1、CADM2が、ヒト分子と同様に変異F蛋白質による膜融合を誘導できるか確認する。 3.CADM1、CADM2と相互作用できない組換え麻疹ウイルスを作成することにより、CADM1、CADM2が神経での麻疹ウイルス伝播に重要であることを、培養細胞および動物モデルを用いて確認する。 4.H蛋白質とCADM1、CADM2の結合様式をX線結晶構造解析やクライオ電子顕微鏡を用いて解析する。
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Research Products
(4 results)