2021 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular basis of low-dose effects based on super enhancer transcriptional regulation on nuclear receptors induced by in utero exposure of next-generation bisphenol derivatives
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20H00635
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松島 綾美 九州大学, 理学研究院, 准教授 (60404050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬々 潤 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 招聘研究員 (40361539)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 蛋白質 / 発現制御 / 生理活性 / 人体有害物質 / 内分撹乱乱物質 / 微量化学物質 / 活性発現の分子機構 / 生体分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代社会では、日々新たな化合物が作られ、ヒトは化学物質の暴露のなかで暮らしている。こうしたなか、有害環境化学物質、いわゆる環境ホルモンとして、様々な化合物が報告されている。なかでも、食品容器などのプラスチック原料であるビスフェノールAは、胎児期における極微量の暴露での生殖系や脳神経系への悪影響、すなわち「低用量効果」が知られる有害環境化学物質でもある。この悪影響のメカニズム解明は、健康・安全のために重要な課題である。申請者らは、これまでに、ビスフェノールAが結合するエストロゲン関連受容体γ型を発見した。さらに、ビスフェノールAの代替、あるいは高機能プラスチックの原料として用いられる新世代ビスフェノールもこの受容体に結合できることを見出した。一方で、エストロゲン受容体とエストロゲン関連受容体を共発現すると、転写活性が増強されることに気が付いた。これらより「ビスフェノール低用量効果は、転写因子が多数結合するスーパーエンハンサー領域を介し、転写活性を変化させることで生じる」と考えた。本課題研究では、これらの知見に基づき、低用量効果の分子基盤を解明する。 4年計画の第二年度である本年度は、マウス胎仔脳を用いたエストロゲン受容体β型に対する免疫沈降クロマチンシークエンス(ChIP-seq)で得られた塩基配列データの解析を進めた。このために、文部科学省科学研究費助成事業の学術変革領域研究「学術研究支援基盤形成」先進ゲノム支援に応募し、解析に関する助言を得た。さらに、ゲノム上のこれらの領域が転写の際にアクセス可能であるのかを解析するため、ATAC-seqを実施した。マウス胎仔脳を物理的手法でシングルセル状態にする技術を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年計画の第二年度である本年度は、初年度に引き続き、脳神経系や生殖系でビスフェノールAが示す悪影響、すなわち低用量効果を解明するために、ビスフェノール低用量効果に関与するスーパーエンハンサー領域を同定することを目的として、免疫沈降クロマチンシークエンス(ChIP-seq)の解析を進めた。組織由来の試料であり、免疫沈降すると期待されるDNA量が少なかったことより、深くシークエンスすることで結合配列を抽出した。さらに、本年度は、オープンクロマチン構造を網羅的に明らかにする手法であるATAC-seqを実施した。本手法の実施に当たっては、学術変革領域研究「学術研究支援基盤形成」先進ゲノム支援の支援を受け、マウス脳における真正なシグナルを得るために、酵素反応条件の最適化を行った。細胞数条件の検討にも関わらず、得られる塩基配列長が長い試料が多く得られた。おそらくは真正な理由があると考えられ、この要因の解明が必要であると考えられた。胎仔期のマウスの腕は、活発に時期特異的に転写活性化が行われていると期待される。そこで、ATAC-seqには、胎生10.5、13.5、17.5日のマウス脳を用い、最終的に、それらのライブラリ作成を行い、シークエンスを実施した。また、培養細胞を用いてビスフェノールAとおよび新世代ビスフェノールであるビスフェノールCの解剖実験を実施した。引き続くコロナウイルス感染拡大によるさまざまな器具、試薬の納期の遅れや、行動制限のため、困難は多かったものの、予定通り解析を終了することができた。総合的には、当初計画どおりの順調な成果を得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
4年計画の第二年度である本年度は、引き続くコロナウイルス感染拡大による行動制限により、実験の開始が遅れたものの、初年度に引き続き文部科学省科学研究費助成事業の学術変革領域研究「学術研究支援基盤形成」先進ゲノム支援による援助のおかげで、 マウス脳を用いたATAC-seq実験系を最適な条件で組み上げることに成就し、最終的には予定通りの実験を実施し、データを取得することができた。今後、得られたデータを解析し、これまでに取得したChIP-seqデータおよび公共データベース上のデータとの比較解析を行い、ビスフェノール低用量効果に関与するスーパーエンハンサー領域を同定する。ATAC-seqにより、オープンクロマチン領域が明らかになるため、核内受容体が結合しうる領域が解析可能である。こうして、マウス胎仔脳でオープンクロマチンとして遺伝子転写翻訳制御に関与することを示す。こうして、プラスチック原料であるビスフェノールAの胎児期における極微量の暴露での生殖系や脳神経系への悪影響、すなわち低用量効果のメカニズムを解明する。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Design and synthesis of a universal coactivator peptide binding to the estrogen receptor and Nurr12021
Author(s)
3.Tagawa, K., Suyama, K., Kesamaru, H., Masuya, T., Nose, T., Matsushima, A.
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Journal Title
Peptide Science 2020
Volume: 2020
Pages: 123-124
Peer Reviewed
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