2020 Fiscal Year Final Research Report
初出資料『義太夫知識』の総合的研究―日本伝統音楽・芸能における近代化の新展開―
Project/Area Number |
20H00672
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
1110:Philosophy, art, and related fields
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Research Institution | 京都府立嵯峨野高等学校 |
Principal Investigator |
TADA Hidetoshi 京都府立嵯峨野高等学校, 教諭、司書教諭
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 義太夫節 / 豊沢団平 / 近代化 |
Outline of Final Research Achievements |
『義太夫知識』は、義太夫節稽古の昔からの形態である口伝を否定し、テキストによる講義と実技演習を組み合わせる方式をとっている。これは、師弟間の口伝・稽古しか存在しなかった昭和初年当時として画期的、革命的なことであり、現在国立(文楽)劇場で行われている文楽技芸員養成事業における研修を、その四十年以前に先駆的に行っていたものと言える。 明治期の三味線名人豊沢団平には数々の逸話が残されているが、『義太夫知識』における、三味線の地位を伴奏から主奏楽器へと高め、節付を伝統的な語り重視から描写音楽形式へと転換し、それらによって義太夫節を近代芸術へと変革した、との評価は前代未聞である。
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Academic Significance and Societal Importance of the Research Achievements |
義太夫の勉強会である「芸道会」のテキスト『義太夫知識』は、歌舞伎の竹本=チョボを対象とした教本であり、いわゆる文楽の義太夫節を考察するに際してはこれまで不要と考えられてきた。しかし、今回それがむしろ現代の研修事業の形態を先取りするものであることが判明した。 豊沢団平に関しては、数多くの逸話とともに三味線の大名人であることは共通の認識となっていたが、義太夫節の近代芸術への変革者ととらえている『義太夫知識』の存在が明らかになることで、彼の評価のみならず、伝統芸能としての義太夫節の捉え方にも一大変化をもたらす結果となった。
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Free Research Field |
演劇学
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