2020 Fiscal Year Annual Research Report
謝冰心の「社会性」についての考察――戦後滞日時(1946-1951)に視点を置いて
Project/Area Number |
20H00678
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
虞 萍 南山大学, 外国語教育センター, 語学講師
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 謝冰心 / 日中交流史 / 瀬戸内晴美(寂聴) |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの中国における謝冰心の作品に関する研究資料から見ると、主に「問題小説」、「愛の哲学(母性愛、児童愛、自然愛)」、タゴールの受容といった側面からのみ検討されるにとどまる。一部の研究者は謝冰心の社会性の欠如を指摘し、さらにはその研究価値にまで疑義を呈した。そのため、中国に限らず日本においても、謝冰心は1930年代にはすでに研究の価値がないと認識されていた。その後約40年間にわたって謝冰心に関する本格的な研究は行われなかったが、中国では1990年代以降に新たな局面を迎え、彼女の研究価値が徐々に再認識されるようになった。一方、日本では依然として「過去の作家」として理解され、研究対象とされない傾向が続いている。謝冰心の作品の正当な解釈、研究価値を明らかにするには、再度その作品自体にたち戻り、当時の社会背景と照らし合わせながら、考える必要があった。本研究では、謝冰心の1946-1951年の来日状況や、日本の知識人との交流の実態を整理することを通して、戦後、日本と中国の知識人との間の交流が日中国交回復に与えた影響を明らかにする。それによって、謝冰心の「社会性」を明らかにすることが目的である。 研究方法としては、1946-1951年の雑誌や新聞に記録されている謝冰心に関する資料を収集し、戦後の日本人に伝えようとしたこと、日本の知識人が謝冰心を通して中国人に伝えようとしたことなどについて整理した。また、謝冰心が中国で行った講演会の記録や報道などに関する資料を収集し、謝冰心が中国人に伝えようとした戦後間もない頃の日本の姿、問題点と、日本人の日中関係に対する考え方や期待について整理した。 本研究では、謝冰心の3回目の来日時(1946-1951)の生活状況、行われた社会活動、日本の知識人との交流に見られる日中交流史における意義を明らかにすることができた。
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