2020 Fiscal Year Annual Research Report
科学史における重要な発見や業績を生徒が追体験できる教材の開発
Project/Area Number |
20H00748
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
竹田 淳一郎 早稲田大学, 高等学院, 理科教諭
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 科学史 / 舎密開宗 / ロウソクの科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では科学史における重要な発見や輝かしい業績を中等教育により有効に導入できる方法を研究した。教科書には所々で科学史の話題が挿入され,人名のついた法則名(ヘスの法則やソルベー法など)は入試でも出題されることがあるため,生徒が科学史に触れる機会は数多くある。しかし教科書の記述はあくまで簡易な読み物であるし,人名のついた法則名も入試に向けて必要だから学習するにとどまっているため,その業績を身近に感じることは難しい。そこでまず生徒が日本人の業績について身近に感じられるように,日本初の体系的な化学書である「舎密開宗」について内容を分析した。 舎密開宗はイギリスの科学者であるWilliam Henryの「Elements of Experimental Chemistry」を底本としたオランダ語版を,宇田川榕菴が翻訳したものであるが,彼はただ原書を翻訳しただけではなく,原書以外の多くの洋書を参考にし,さらに自分自身でも多数の実験を行っており,原書の誤りも正しい化学的知識に基づいて訂正されていることから,彼の化学に対する造詣の深さが明らかになった。また彼の出身の津山への現地調査により津山藩では宇田川家,箕作家という現在では知名度があまり高くなくても3代以上にわたり日本の歴史上重要な役割を果たした人物を輩出していることも明らかになった。 以上の研究結果に加えて,ファラデーのロウソクの科学、華岡青洲の行った世界初の麻酔技術、江戸時代の金属精錬の技術などについて中等教育に導入するための基礎研究を行った。これらの研究成果に基づいて、生徒にオンデマンドで授業を行い,その結果について分析した。授業を受けた生徒のアンケートでは約80%の生徒が科学史に興味をもったという結果が得られた。また,科学史に関する問題では難易度が高いものよりも低いもののほうがより面白みを感じるというデータが得られた。
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